君と過ごす十回目の夏。

君の可愛い妹は相変わらず可愛くて、夏の終わりのこの花火大会だけは今も変わらず三人で歩く。小さかった彼女はもう随分大きくなって、彼女にとってとても高かったはずの提灯は、今では手を伸ばせば触れられそうなほど。いつの間にかご飯を作るのも買い物も洗濯も、彼女のものになっていて、君はついにこの夏家を出た。それでも一緒に花火を見に行こうと彼女の手を引き、反対の手で俺をひく。

その手は変わらず温かくて、俺は今でも君に恋した日のまま。髪の色とか、手の大きさとか、靴のサイズとか、朝起きる時間とか夜ご飯の時間とか、変わったことはたくさんあるけれど、今も隣にいる。あの夏、君が俺を好きだと言ってくれて、触れた君は少し震えていて、それでも男前に俺を受け入れてくれたあの頃のまま。

赤髪だった友達は相変わらず赤い髪の毛で花を売っている。苦手だった会長は病院で子供を診ている。弟思いのお兄ちゃんも、今は自分の娘にメロメロな親バカになっている。

二度目の夏、三度目の夏、今でも一つずつ思い出すことが出来る。きっとこの十回目の夏も。
この夏は君が俺のところへ来た。嫁いできた、と俺は勝手に言っているけれど、それはこの先もずっと一緒にいてくれるんだと嬉しいからだ。繋いだこの手を一生離さないでと、眠りにつく度思うのだ。

「遥ー」

「はるちゃん?」

「どうしたの、何か食べたいのあった?」

「あっ、たこ焼き?まおも食べる」

繋いだ手をほどかないで、これからもりんちゃんの隣を歩いていけたらいい。たまに喧嘩もして、歳をとったねと笑って。同じ布団でおはようとおやすみを囁きあって。
家族も友達もりんちゃんのおかげでもっともっと大事で、大切にしたいと思えるようになったことを彼には誇ってほしい。

誰より優しくて、強い、そんなりんちゃんが俺なんかを選んでくれたことが、この人生で一番の幸福だ。

「うん…食べる」


立ち止まれば振り返ってくれる君に、俺は今でも泣きそうになる。





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bkm


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