「プレゼントですか?」

お年玉の貯金と、じいちゃんのお店を手伝ってもらったバイト代、それを握りしめて駅前のファッションビルに入っているアクセサリーショップに足を運んだ。といっても、学生がてを出せる金額のお店だ。本当はすごく高いものも考えたけれど、それは今じゃないのかもしれないと思ったり、現実的な事から考えても身の丈に合わないことをするのも違う気がして諦めた。

「あ…はい」

ずらりと並んだ指輪のショーケースから、声をかけてきた店員さんに視線を移すと長い髪を横で一つにまとめた女の人がいた。

「恋人さんとか?」

「ああ、はい」

店員さんはどういう感じで探してますか、と俺が見ていたケースに視線を落とした。長い睫毛だ。りんちゃんより長いなと思ったのと、これが所謂“マツエク”かと気付いたのはほとんど同時だった。文化祭の時谷口くんのお母さんが来ていて、「見てよこのマツエク」と彼が教えてくれなければ、俺はその存在さえ知らなかっただろう。とにかく長くて濃い睫毛は偽物だと思え、と笑っていた顔が思い出される。
りんちゃんはナチュラルに長いと思うんだけどなあとぼんやり考えた俺の横で、店員さんは返事を待っているようだった。

「えっと…とりあえず、一通り見ます」

「分かりました。一応、指輪は内側に名前とか文字を無料で入れること出来るので、また何かあれば声かけてください」

「はい」

どんなものが良いかはたくさん調べた。けれど、携帯の画面越しだけでは分からないのと、本当はりんちゃんへ送るものだけのつもりだった筈がやっぱりペアが欲しいと気持ちが変わってしまったりで結局決まっていない。
ただ、ゴツいものよりはシンプルなものがいい。色はシルバーが良い。自分も、仕事中はもちろん出来ないからネックレスにしても邪魔にならないものがいい。でも華奢すぎても似合わないのだろうか。そもそもサイズってどうやってみるんだろう。りんちゃんのサイズってどうやって合わせれば良いんだろう

「……」

りんちゃんの手には、やっぱりシンプルなものがいい。でも華奢すぎるのは男の手には目立たないから、細すぎるのも…
手に取れるものを一つ取り、自分の指にはめてみる。サイズが合わなかったそれは関節で止まってしまったけれど、指輪ってこんな感じなのか、と感じることは出来た。
綺麗に切り揃えられた爪、大きい方ではないけれど掌と指のバランスの良い手だ。関節も自分みたいにゴツゴツしていないからすらりとしている。

クロスしたもの、十字の模様が入ったもの、キラキラした小さな石が埋め込まれたもの、りんちゃんの手にしてみたら、と全部を見てみるとやっぱりごてごてしてないのがいいと思った。

「あ…!すみません」

「はい、お決まりですか?」

一目惚れだった。

「あの、これ」

「このねじれてるデザインのリングですか?」

「はい」

「ペアでご用意しますか?」

「はい」

「サイズなんですけど、お兄さん測らせてもらっても良いですか?」


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