「遥、動いて…いいから、」
「だ、だめ、俺がまだだめ」
上唇と上唇を擦り合わせながら、遥が眉間にシワを寄せて「イッちゃいそう」と色気のないことを堂々と溢した。中でひくひくと揺れている遥のものを抱き締めるみたいに、下腹部に少し力を入れるとすぐにだめを連呼する。
「意地悪しないで」
「それは遥の方だよ」
「りんちゃんのえっち…だけど、俺だけ先にイくの、やっぱりやだよ」
乱れた髪から露になったおでこをくっつけて、目を伏せた顔はそれでも整っていて涙で濡れたまつげが緩やかに揺れていた。
「なんか、終わらせたくないな…」
「ずっとこうしたままでいたい」と、泣きべそかきながら続けた遥は、僕も同じだと言うことに気づいているんだろうか。このままでいられるならこのままでいたい。でも、遥のものはそうはいかないだろう。気持ち良いと言いながらすっかり萎えてしまった僕が、遥に我慢をさせているのは間違いない。
「遥、手…」
「ん?なに?」
「…さわっ…て」
「、うん、ごめんね」
「だから─」
「好き、大好き、りん」
「っ」
僕が誘導した先を、遥の大きな手が優しく擦る。萎えていたはずのそこはすぐに元気になり、「動くね」と溢された言葉と同時に遥の腰が動いた。
「ふっ、ん…」
僕の顔をじっと見下ろしながら、時折甘い息を漏らしながら、ずるずると遥の腰が引かれる。感じたことのない感覚に再び襲われ、熱に浮かされるみたいに繰り返し遥の名前を呼んだ。
その一つ一つに返事をしながら、今度は緩やかに腰が打ち付けられる。
「はー…どうしよう、気持ちよすぎて、頭…おかしくなりそう」
「んっ、ん…はる、」
「めちゃくちゃ幸せ」
「あっ…」
もうダメかも、を二回ほど呟き、本当に限界らしい遥は腰を押し付けたままグリグリと中を擦り、僕のものを丁寧に扱いた。汗と涙でくしゃぐしゃな顔に落とされるキスを受け入れながら、僕ももう達する寸前だと目で訴える。
「イく?りんちゃんも、もうイく?」
「ん、うん、」
「俺も、も…」
言いながら、遥のものが僕の中で小刻みに震え、薄い避妊具越しに射精しているのを感じて僕も達した。自分の出した精液がお腹の上に飛び、抱きついてきた遥の体を濡らした。
「はぁ、はぁ…」
「遥、待って、お腹…」
「いい、から…抱き締めさせて。夢じゃないって、思わせて」
「夢って…」
「幸せすぎて、不安だから…」
汗ばんだ首元から漂う遥の匂いが鼻腔を擽る。大きく揺れる体から伝わってくる熱も鼓動も、全てが僕をとても好きだと伝えているみたいで。こんなに自分を愛しく思ってくれる人に出会えたことも、自分もその人をとても愛しく思えることも、本当に全てが奇跡みたいなんだ。だから不安で、それは痛いくらい分かる。肌の温度に安堵するのもよく分かる。今、同じ気持ちでいることも…
愛の言葉も表現も、乏しい僕らにとって好きだと言って抱き締め合うことはとても重要だ。17歳になって何が変わったと聞かれても答えられない。でも、少くとも、僕は胸を張って遥に好きだと言えるようになったと言いたい。
「うぅりんちゃん…」
「うん、夢じゃないよ」
ぐずぐずと鼻をならす遥の頭を撫でながら、肩が涙で濡れるのさえ幸せだと思った。まだ僕の中に入ったままの遥に、「好きだよ」と呟いて目を閉じた。