「っ、」

「ごめん、冷たい?」

「ううん、大丈夫…」

「りんちゃん、」

「ん?」

「さ…わり、ます。今度こそ」

「、はい」

ぎこちなく、遥の指が僕のお尻の谷間を撫で、人肌になったローションをその隙間に塗り込んでいく。ゆっくり、本当にゆっくり、遥の指が僕の中に押し入ってきた。

「んっ」

「い、痛い?」

「ううん…へい、き」

「ほんとに?無理してない?」

まだ無理する程のところまで触られていない気がする。壊れ物を扱うみたいに優しく触れる手がとても愛しい。愛しいのと、同じだけもどかしい。

「はるか、」

「何?どうしたの」

「大丈夫だから、続けて…」

「、うん、辛かったら、すぐ教えて」

「うん」

少しくらい強引にされても大丈夫だ。
人に触られたことのないそこは、もちろん自分でだって快楽の為に触ったことなんて無い。だから、この違和感とか、込み上げてくるぞわぞわした感覚とか、それが気持ち良いのか悪いのか、それも良くわからない。

「んっ、ん…ぁ、うぅ…」

「りん、」

「ん」

「こっち、見て」

「へ、ぁ…や、」

「好き、りんちゃん」

指を挿入しているだけなのに、まるで遥自身が入っているんじゃないかと錯覚するくらい、遥の顔は恍惚とした表情だ。僕に覆い被さったまま、下を触るのと逆の手が僕の頭の横でそのバランスを保つために縫い付けられている。じわりと汗の滲んだ額から前髪を退けてやったら、そのまま顔が近づいてきて掠めるだけのキスが繰り返された。
中途半端に緩んだ口からは、自分の情けない声が漏れてしまっていて、閉じればすぐに遥の唇が開くように催促してくる。

「ふっ…んん、はる…はる、か」

「うん」

「なんか、変…」

「気持ち悪い?やめる?」

すっかり二本の指を飲み込んだ僕の後孔から、遥の指が出ていく。

「っう、あ」

「ごめんっ!痛かった?」

生々しく遥の指から外されたコンドームはティッシュにくるまれた。それはそのままゴミ箱に落とされ、遥の手は新しいものへとのびる。

「ううん、なんか、分かんないけど…」

「ごめんね、本当は、ちゃんと気持ち良くなれるところがあるらしいんだけど…俺が下手だから…」

それは恐らく、遥が下手というわけではない。お互いが初めての僕らにとって、一番“気持ち良い”のは肌と肌の重なる感覚とか、体が繋がった感動とか、そういうものであってと良いんじゃないだろうか。



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