あー、もう。夏休みって、こんなに忙しいものだったっけ。
こんなに、コロコロと気持ちに変化が訪れるものだったけ。

「帰ったら、夏休みの計画たてようね」

「掃除と、今日の分の課題済ませたらね」

「ん、頑張─」

「あれ、遥と音羽」

「あ、樹くん」

志乃はへらりと笑う途中でかけられた声に、顔面はそのままで停止した。なんとも間抜けな顔だった。そんな事はお構いなしで偶然遭遇してした樹くんは僕らに駆け寄ってきた。

「お前ら、こんな早起きしてなにしてんの」

「まお、保育園に送ってきたんだ」

「まおって…ああ、妹か」

「うん」

「遥も?」

「志乃も」

「樹こそなにしてるの、早起き苦手なくせに」

「いや、俺寝てない。今帰り道」

「え、朝帰り?」

「りんはいいの、樹なんかのこと気にしなくて」

「おい」

「事実じゃん」

「…朝帰りって言うか、溜まり場泊まり込んでた」

「樹!」

じとりと志乃を一瞥してから、気にした様子もなく僕の話に戻った樹くん。それが面白くなかったのか、強引に志乃の胸に納められてしまった。

「志乃、苦しい、」

「でも〜」

「遥、男の嫉妬ほどみにくいものはないぞ。俺減ったし、帰るわ」

「ご飯、食べてないの」

「あ?ああ」

「うち来る?残り物だけど…」

「ちょ、りん!」

「いいのか」

「うん、僕は構わないよ」

樹くんには、お礼もきちんと言いたいし。
口には出さないで、なんとか顔に出してみたけれど…伝わっただろうか。わからないけれど、拒否する志乃をよそに「じゃ、行かせてもらおうかな」と返事をしてくれた。

「やだ、何で樹が来るの」

「遥んちじゃねえだろ」

「そうだけど、でもっ」

「おい音羽。躾はきちんとしとけ。吠えすぎ」

「え、ごめん。あ、うちここ。どうぞ」

「ああ、お邪魔します」

「ほんとお邪魔虫」

「はいはい」

「はは…」

この二人って、ずっとこうなんだろうか。
志乃はまあ、わからないでもないけど…樹くんは一見クールな感じで、怖そうな雰囲気を纏っている…まあ実際最初の頃はかなり怖かったんだけど…それが口を開けばこんな人柄だ。



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