「いいなー、まおもりんちゃんとはるちゃんと一緒がいーいー!」
「保育園もおやすみ入ったら一緒だよ?」
「やあだ〜ずるいー」
「じゃあお休みになったら、どこか出掛けよう」
「…」
「普通の日だって、お祭りとか花火とか、一緒に行けるよ?」
「……」
「でもまおがいい子にしてなきゃ行けないかなあ…」
「する!まおいい子にするからあ〜」
終業式の次の日、学校はもう休みだというのに志乃はいつも通りの時間に、何でもない顔で我が家へやって来た。でもそれが私服なものだから、まおが「はるちゃんお休みなの〜?りんちゃんも〜?まおだけ保育園?」と駄々をこねた。
「よし、じゃあ保育園頑張ろうね」
「むぅ〜」
この言い方はどっちなんだ。僕と一緒に居たいのか、志乃と一緒に居たいのか。分からない。志乃だったら面白くない。悔しい。
「りん、そんなに怖い顔しちゃダメだよー」
「えっ、怖い顔してる?」
「うん、ここ」
ここ、とぐいぐい眉間を押されて、シワが寄っていたのだと気づいた。
「まおもぐりぐりしたあいー」
僕と志乃の間を歩くまおは僕らのやり取りをキョロキョロしながら見上げていて。今日はご機嫌斜めだから少しだけ甘やかしてあげようと抱き上げれば、小さな手は僕の眉間じゃなくて首へのびてきた。そのままぎゅっと抱き付かれ、ぐりぐりと頭を首元へ撫でつけられる。
「まおー、いつもの時間に、お迎え来るよ?」
「んー」
「抱っこのままひろみ先生に、おはようございますする?」
「あっ、やだー」
なんてやりとりをしているうちに保育園についてしまい、あまり納得のいっていないまおを送り出した。
「…まおちゃん、やきもちやいてるのかな」
「やきもちって…何に」
「俺が一日中りんのこと独占できるから」
「っ、まおに、そんな意識はないよ」
「そうかなー。そうだと思うけどなー」
そうだったら嬉しい、ものすごく。
でも毎朝あの感じじゃ、先生たちにも申し訳ない。
「じゃあ、まおの送り迎えは、僕が一人でした方がいいかな」
「それはダメ。俺も一緒にするの」
「でも、せっかく休みなのに、いつも通り早起きさせちゃうの悪いよ」
「いいの!俺はりんと一分でも長く一緒に居たいの!それに全然早起きなうちに入ってないから大丈夫!」
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