次の日、薬を飲んで寝たおかげか、随分頭痛は治まっていて。いつも通り迎えに来ていた志乃と、まおを保育園へ送り、学校へたどり着いた。そこまでは本当にいつも通り。雨が降りそうな天気に、頭が痛くなりませんようにとお願いしておいた。
そして違ったことが一つ。先生の顔だ。

「さっそく、テストの結果を返します」

答案は各授業で返されるからと付け加え、先生は小さな紙切れを見つめて名前を呼び始めた。その顔がどこか落ち着いていない様で、なんだか僕までそわそわしてしまった。
何せ志乃のことがあるから。
等の本人は、これもまたいつも通りのにこにこで僕を見ていて。

「音羽」

「あ、はい」

教卓まで、テスト結果のまとめられた紙を受け取りに行くと、先生が泣きそうな顔をして僕の両手を掴んだ。

「え?っと…」

「音羽、ありがとう、頑張ったな」

「は、はい…?」

最終的には頭を撫で回され、やっと目にすることのできた結果は、8位。学年8位。
確かに、そこそこすごいかもしれないが、去年と比べて特に大きな変動があったわけじゃない。科目の下に書かれた点数も、特別伸びたものがあるわけじゃない。何をそんなに褒めるんだと思ったまま席に戻った。するとすぐに、今度は志乃が僕の頭を撫で回した。

「え、なにな─」

「簡単に触らせちゃだめ」

「へ?」

何を拗ねているんだ一体。
テスト期間中だけ離されていた僕と志乃の机。それは今またぴったりと寄せられていて、座るのにも一苦労だった。僕が座ってすぐ志乃の名前が呼ばれ、先生のその声がなんだか少し震えている気がした。どうだったかな、なんて気にしながら受け渡しの様子を眺めて。そんな志乃は紙を見た瞬間目を見開いて、先生の言葉も聞かないでバタバタと戻ってきた。そしてその目が涙を溜めているのに気が付いて、「ああ、ダメだったのかな」と思った。

「りん!!」

「え、ぐっ…」

「りん、りん〜」

思ったんだけど、志乃が僕を抱き締めるから…それも相当な力で…一瞬視界が白くなってそんな考えが吹き飛んだ。

「し、の…苦し……」

「あ、ごめん…でも、でも、ありがとう!俺すっごい嬉しくて」

「え…結果、良くなってた?」

「うん!!」

これは嬉し涙だったのか…一緒になって喜んだ僕は、けれどそれを見て頭が真っ白になった。



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