「くそー、めっちゃ天気良いじゃん」

休み明け、球技大会当日はため息が出るほどの晴天だった。まだ五月で良かったなと、これが真夏だったら倒れそうだなと、そう思うほどの。だけどだからこそ、これは体育館よりグラウンドの方が良かったかもしれないと感じた。

「外にすれば良かったなー」

「僕もちょっと思った」

「やっぱり?でも音羽すぐ鼻赤くなるから日焼け止め塗らねーと」

「そんなことないから大丈夫だよ」

簡単な開会宣言を森嶋がして、すぐにそれぞれの競技ごとに招集がかかった。遥の金髪は眩しいくらい光っていて嫌でも見つけてしまうほど目立っていたけれど、声をかけることは出来なくて僕らはそのまま体育館へ向かった。

「あ、意外と涼しい」

「夏ほど暑くないね」

直射日光が当たらない分涼しく感じるものの、きっと動き回れば普通に暑くなるだろう。ネットのはられた館内の正面、リーグ表が掲示されていてそれぞれの一位が決勝トーナメントへと進める、という旨が記載されていた。

「どうせやるならこれ進みたいよなー」

「谷口が一番足引っ張ってるからな!」

「痛っ!」

「俺らCコートだって」

谷口くんはチームの子に小突かれた肩を押さえながら笑って、僕もみんなのあとへ続いてコートへ入る。すでに他のクラスの人たちがいて、学年ごとに違うジャージの色が混ざっているのが体育祭みたいで、学校行事だ、と改めて感じた。こういうのが楽しくなる日が来たことも嬉しいけど、何より、自分がそのなかにいることが嬉しい。

「音羽、紐ほどけそう」

「えっ、あ、ほんとだ。ありがとう」

「隣女子だ〜テンション上がる」

屈んで紐を結び直す頭上で、誰かがそう言って隣を見ると、示し合わせたように全員二つ結びの一年生のチームが目に入った。その中には水谷さんもいて、僕と目が合うと少し気まずそうに眉を寄せたあと、小さく会釈した。少しは、クラスに馴染めたのかな、と勝手に安心して立ち上がったところで一回戦のチームはコートへ、それ以外のチームは指定された得点係りや審判へ、応援や見物はコートの外へと生徒会の人がマイクで告げた。森嶋は外らしく、壇上で喋る子は二年生の女の子だった。

───…

「俺聞いてないんだけど」

「何が?」

「生徒同士で審判やるってこと!」

「実行委員には説明してあったんだけどなあ…ソフトはチーム数少ないし、一試合も他より長いから大変かもしれないけど、頑張って」

太陽の眩しさに目を細めるのと、森嶋を睨むのを同時にした遥は盛大にため息を落として膝を抱えた。一試合目を無事に勝利し、次は空き時間だからと体育館へ向かうところを森嶋に捕まったのだ。

「ほら、次志乃のクラス審判だよ。大橋迎えに来た」

「もう疲れた」

「おい遥、始まるぞ」

「うー…りんのとこ行きたい〜空き時間もやることあるなんて思わなかったし」

「バレーより役割少ないからサボればよかったのに」

「副会長がそれ言うの?」

「遥!さっさと来い」

「うるさいなあ!行くってば!」

樹の赤い髪が、この暑さと眩しさで余計に暑苦しいものに見えた遥はその頭を軽く睨んで腰を上げた。その瞬間、背後を凜太郎が通るのが横目に見えて振り返ると、谷口と凜太郎が誰かを支えて歩いていた。

「り─」

「試合始めるよー審判係急いでー」

「んもー、副会長もうるさい!」

凜太郎はこっちに気づいていないか、と仕方なく再び背を向けて集合していた列へ並ぶ。樹にも見えたらしく「音羽怪我でもしたの」と、校内へ続く渡り廊下を指差した。たぶんもうそこにはおらず、中へ入っているだろう。

「りんはしてない、と思うけど」

「ふーん」

「た、谷口くん一緒だし、平気だよ」

「何、珍しいこと言うじゃん。谷口には妬かねーの」

「樹には関係ない」

「大人になったな〜」

「うるさい!」

「はいはい、うるさいのはそこです。じゃあ三回戦始めます」

「お願いしまーす」と少し間の抜けたような声がハモり、それぞれポジションへ走った。遥の頭には凜太郎のことがちらついていたけれど、谷口が一緒なら大丈夫だろうと思ったのは事実。面白くないし、嫉妬だってしてる。けど、信用もしている。これが終わったら保健室へ寄ってみよう。居なかったら体育館に戻っているだろうし、とそこまで考えてから持ち場についた。



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