「あた、ってる」

「えっ、ごごめん、離れる」

「え、いや、そういうつもりで言ったわけじゃない、んだけど」

くっつきすぎて普通に当たってしまうんだろうけど、でもそれは明らかに硬くなっているというか、つまり、そういうことで…気にしないで寝てしまえば良いのに、意識がそこにばかり集中してしまって無理だ。

「りんちゃんと寝れるなんて嬉しくて、ごめん」

「何で謝るの」

「だって、なんかこんなの…」

「このまま、寝るの?」

顔なんて見れないけど、どうせ暗いし目もよく見えないから良いやと体の向きを変えると、思ったよりずっと近くに志乃の顔があり、熱い息が頬を掠めた。

「わ、わわ、りんちゃん」

熱の籠る志乃の胸におでこを押し付けて正面から抱きつき、「謝らないでよ」と呟いた。聞こえていないかもと思うほど、小さな声で。

「りんちゃん、りん、」

「ん、む…」

なに、と答えたはずの僕の声ごと飲み込んだ志乃の唇は、さっきよりも深くて粗いキスをそこに落とした。思いきり抱き締めて、ちゅっちゅっと静かな部屋に卑猥な音を響かせて。

「んっ、あ…はる、」

「さ、触っても良い?」

ちょっと待って、まだ躊躇ってるのか、この男前は。もう我慢できないよとか平気で言うくせに、いざ目の前にしたらびびってしまう、なんて。でもそれだけ大事にされているのかもしれない。

「あっ、ダメ!りんちゃんは触っちゃダメ」

「え、」

「りんちゃんに触られたら、抑えらんない」

「は、あ?」

「ダメ、修学旅行中だし、りん体辛くなったらやだし、ね、だから」

「……」

考えてみれば、志乃と最後までしたのは一度だけ。そういう雰囲気になっても出来る状況じゃないとか、時間がないとか、そういうこともあったけど。お互いが触りあう、というのは二回くらいした。そこまでして、最後までしないって…え、もしかして…

「遥、気持ちよく…なかった?」

「はっ!?」

「あ、えっと…」

「なに、なにそれ」

どうしよう、もう恥ずかしくてこれ以上喋りたくない。なんか僕ばかりが期待して、盛っているだけだ。

「何でもない、」

「何でもなくないでしょ」

「無理、もう…恥ずかしい、から」

「やだ、りん、りんちゃん、こっち見てよ」

「無理だって、ほんと、やめて」

「それの方が無理だってば、」

無理矢理仰向けにさせられ、志乃が覆い被さると、枕元の電気がパッと小さくともった。

「なっ…やだ、ちょ、遥!」

顔、見える…

「俺はしたいよ、最後まで」

「なん─」

「でも、りんちゃん痛かったでしょ?」

当たり前だ。でもそれは分かっていたことだし、初めてだったし、仕方がない。…回数を重ねても慣れる気はしないけど…それでも、好きな人と肌を合わせて気持ちを確かめ合うように体を重ねるのは気持ち良かったんだ。


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