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インターハイが終わると国体のメンバーに選ばれ合宿、それが終わると自分の高校の合宿と続き、夏休みなんてものは一瞬で終わってしまった。学校が始まってしまえば日々の勉強と部活、そして国体。うちの学校からは俺と、高見先輩と、三年の先輩がもう一人、そして加藤が選ばれた。結果を言えば国体も優勝した。その後U18日本代表のキャンプに高見先輩と呼ばれて参加した。

夏の暑さに嘆いていたはずなのに、気づけば季節は秋も終わる頃。自分の誕生日もいつの間にか過ぎていて、夏なんてどこにあったんだろうと不思議に思えるほどだった。

制服は冬服へと移行し、毎朝シャツとブレザーの襟を直してネクタイの結び目を整えていた日が恋しくなった。本当に不思議なことに、インターハイが終わってから孝成さんを見かけることが激減した。一週間に一回、何処かで見かけられればいい方だ。どうしてこんなに会わないのか、答えは簡単だった。彼が受験勉強に専念しているからだ。孝成さんは俺を見つけても声を掛けてはくれないし、俺も孝成さんの邪魔になるのは嫌だなと声を掛けられず、登下校の時間も違えばもう遠回りをして帰る必要がなくなった通学路も違う。

「葉月」

何度も何度も呼ばれた名前が憎い。孝成さんの声が聞きたい。もどかしさと追う背中を見失った心細さに、心に大きな穴が空いていた。

「おーい、生きてる?」

「……ギリギリ」

「お疲れだな〜」

「俺体力には自信あるはずだったんだけどな…ダメだ、気絶しそう。眠い」

「夏からの成長が著しいな〜さすが副キャプテン」

「それほんとやめろ」

あの日、孝成さんが俺に話したかったことを知ったのは試合の翌日だった。
すでに引退を決めていた三年生はおらず、残った高見先輩から告げられた「キャプテンは豊峰、副キャプテンは葉月に」という言葉に、ああ、それだったのか、と。けれどその時初めて耳した言葉だ、「えっ!?」なんて誰より先に間抜けな反応をしてしまった。

どうして俺なのかと軽いミーティングの後真っ先に聞くと、高見先輩は表情一つ変えずに俺を見た。「孝成から聞いてるだろ。お前は二年で間違いなくエースだけど、でもそれだけだから。チームをまとめる立場に立って欲しいって」と、先輩の口から伝えられたのはそんな短いものだった。俺はまだ全然受け止められなくて、それでも怒涛の四か月を過ごす間弱音を吐く暇は無かった。

とにかくバスケ漬けの日々は一年の終わり、ウィンターカップを迎えて俺も流石に疲れていた。調子はすこぶる良い。孝成さんが居ないというだけで感じる喪失感は大きいけれど、とにかく目の前の事をこなすのに精一杯だった。
でも、一つ試合が終わる度、孝成さんの欲情を孕んだ目に見上げられてキスをしたことが甦って泣きそうになる。




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