05

大晦日は地元の友達と昼から集まって鍋をして、年が明ける少し前に家を出て初詣へ向かった。それからぐだぐだ二日の朝まで過ごし、親戚の家へ挨拶に行き、気付けば三日。冬休みはまだ続くけれど、部活の休みは今日まで。明日には部活で孝成さんに会えるというのに、この欲求不満みたいな感覚はなんだろう。

「葉月〜バスケやりに行くんじゃないの」

「……行く」

「じゃあもう行こ。準備万端なんだけど」

「お前自分で自転車のってけよ」

「え、乗せてよ」

「死んでも嫌」

外仕様のバッシュを履いて、ネックウォーマーに顎を埋めながら文句を言う香月に自転車の鍵を投げる。

「もー。てか他に誘う友達いないわけ?」

「明日からまた毎日会うのにわざわざ今日声かけねぇだろ」

「あ、そっか。でも、部長とか」

「孝成さん?」

「そうそう、タカナリさん。あの人ストイックそうだし、誘えばくるんじゃないの」

「……」

いや、さすがにどうだろう。
いきなりすぎやしないだろうか…

「あーもう鬱陶しいなあ。あけましておめでとうございますと今年もよろしくお願いしますって最初につけて今何してますかって聞けば良いじゃん」

「お前のそういう男みたいなとこほんと羨ましいわ」

「はあ?」

早くしてと急かされ、俺は香月の言葉通り孝成さんへ連絡を入れた。玄関を出ると昨日の夜うっすらと積もっていた雪はもう溶けていて、雲のない空に浮かぶ太陽の光で道路が眩しかった。
長い髪を頭の上で団子にして自転車をこぐ妹の背中を見つめながら、細いなと思う。女子高で俺と同じくバスケをしている美月は、細い足で軽やかに前に進む。

家からすぐ近くの公園にバスケのコートがあり、今日みたいにくそ寒い日でなければ誰かしらが練習していたり、ストバスをしている人がいる。がらんと寂しげにしていたそこで自転車を止め、「やっぱ貸し切りじゃん」と嬉しそうに走る香月に続く。

「タカナリさん返事きた?」

「……あ、きた」

「なんて」

明けましておめでとうと、今年もよろしくと、勉強してるという、相変わらず簡素な答えが記されていた。

「じゃあいいじゃん、来てって言えば」

「馬鹿。勉強してんだよ」

「葉月さあ、何の為に今の高校選んだの」

香月は片手でボールをついて、片手でシュートを打った。二卵性と言えど、双子というのは侮れない。この半年で美月は孝成さんの存在を把握して、俺が彼に憧れていてとても好いていることも勘づいた。

「分かってる?一つ上ってことはさ、先に引退するんだよ」

「そこまで馬鹿じゃねーよ」

あっそ、と興味なさそうに呟き、若干湿ったボールを俺に投げた。赤くなった鼻に、三日前の孝成さんを思い出す。

「パスパース」

「……」

「ちょ、下手!」

「香月がおっせーんだって」

『〜公園でバスケしてるので、よかったら来てください』たったそれだけの、友達に送るなら何の勇気も要らないメッセージを送り、美月がゴールを外して転がったボールを拾う。



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