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「いや、すげー機嫌悪いじゃねぇか…」

「はい?」

「だから!孝成だよ!お前なんかした?てかお前しか考えらんねぇんだけど」

「何ですか突然」

「とぼけんな。あれ完全にキレてるだろ」

試合明けの部活はミーティングから始まり、そのあと軽く体を動かす程度で終わった。更にそのあと、数人が自主練習で残っているものの、まあだいたい残るのは同じメンツなわけで。
高見先輩は孝成さんの機嫌が朝から良くないと愚痴っていて、そういえば昨日別れ際疲れていたみたいでしたと答えた。それでも納得いっていないらしく、黙ってパソコンの画面を睨んでいる孝成さんをチラチラと見ている。

「朝迎えに行ったときは普通だったと思うんですけど…」

「すっとぼけんな」

「すっとぼけてるのは孝成さんじゃないですか。今朝だってパジャマの上にネクタイぶら下げてブレザー裏表反対に羽織ってましたよ」

「それは通常運行だろ。お前が甘やかすから酷くなってんだよ」

「でもほっとけないじゃないですか」

「お前がくる前はほっとかれるのが普通だった」

「ええ…」

孝成さんの手元にあるパソコンには、恐らく次の対戦相手の試合記録でも入っている。次、といってもリーグ戦になるから1チーム、とはいかないはずだけど…

「仮にそうだったとして、今孝成さんの機嫌が悪いのとは関係なくないですか」

「ねぇよ」

「理不尽…」

「とにかく、お前明日までになんとかしろよ」

「どうやってですか」

「んなもん自分で考えろよ」

「理不尽!」

「馬鹿の一つ覚えか!」

「ほらさっさとご機嫌とりしてこい」と背中を叩かれ、ものすごく真剣な顔をしている孝成さんに一歩近づく。けれどいきなりどうかしましたかと聞くのも変な気がして、とりあえずトイレに行ってくると高見先輩の手を逃れた。

孝成さんの横を通ったけれど反応はなく…というか気付いてもいなかったかもしれない…俺はあっさり体育館を出て部室棟のトイレに向かった。体育館のトイレでもよかったけど、それでは全然高見先輩から逃げれていないから。

昨日の帰りは疲れているんだろうと思った自分の予想はハズレだったのか…いや、疲れてはいたと思うけど…それ以外の何か…何か、あっただろうか。

「あっ!」

んー、と少し顎をあげた瞬間だった。





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