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「葉月の試合見てた。まだどっかに居るかも」

「声かけた?」

「ううん。離れてたし。とーるちゃんもたぶん高校の友達かな?知らない人と一緒だったし」

「あ、そう…見かけたら声かけるわ」

「うん。じゃあ。あ、応援よろしく」

「しねーよ」

「って、タカナリさんに伝えておいてね」

「伝えねーよ」

綺麗に纏められた長い髪が背中で揺れるのを見つめていたら、隣から加藤が「似てないよな〜」と呟いた。特に反応しないで移動を始めた高見先輩達についていくともう一度同じ事を言われた。

「なんなの」

「めっちゃ美人だよなって話」

「だから中身は男だって」

「見た目あれで中身男ってそれはそれでいいじゃん」

「じゃあ付き合えば」

「付き合いて〜」

「でも香月の方が背高いかも」

「だよな、そこだよな…ハイヒールとか履かれたらおしまいじゃん」

「履くよ、アイツ。結構普通に」

「そりゃ厳しい」

そもそも加藤のことなんて眼中にないから、と言ってやりたかったけれどやめておいた。今のことろ、香月は自分の背が高いことを“コンプレックス”とは思っていない。
うちは家族全員大きいし、子供の頃からずっとバスケをしているからか、周りの男子と目線が同じこともむしろ当たり前。女子の中でも、同じくらい長身の選手は居るし気にするほどでもないからだ。
ただ、それでも香月が一人で私服でハイヒールを履いて歩いていたら目立つはずだ。振り返られたり、大きいねと囁かれたりするだろう。
そんなとき、隣にいる男が香月より小さかったら「彼氏小さいじゃん」と笑われることだってあるかもしれない。それは可哀想だよね、とその程度の配慮はあっても、香月自身は気にしていないのだ。

「あ、葉月」

「ん?」

「部長こっち見てる」

「なに?」

「さあ?あ、来た」

持参した昼食を広げていた俺に、影が落ちる。
視線を目の前に現れた靴の先から上へ持ち上がると、にこりと微笑んだ孝成さんがいた。そのまま俺に視線を合わせるみたいにしゃがみこみ、「ここいい?」と問うた。

「あ、どうぞ。加藤、荷物邪魔。どかして」

「はいはいすいませんね」

他校の生徒がぞろぞろと行き交う通路から離れ、うちが獲得したギャラリーの椅子に座っていたはずの孝成さんが加藤の荷物を隅に避けて座った。
俺は椅子が狭くて耐えられず、そこから少し離れた休憩スペースみたいなところに加藤と居て。




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