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「お前なんで孝成がキャプテンなんだろうって思ってるタイプ?」

「そんなことは思ってません」

「まあなんでもいいけど、公式戦間近で見て腰抜かすなよ」

「そんになんですか?」

「葉月は初日の練習と公式戦一試合目で腰抜かしたよな」

「それ言わないでください」

「まじで圧倒されて動けません状態」

「だから部長の…」

「下僕」

「ほんとやめてください。それ孝成さんがヤバイ人に聞こえますから」

「そうだな、お前が率先して舎弟してるみたいなもんだしな〜」

深丘は終始驚いたように頷いて、俺のことを少し勘違いしながら「なるほど」と続けていた。別にどう思われてもいい。ただ、それでも高見先輩の言葉は気になる。

俺が孝成さんと個人的にご飯を食べに行くということはほぼ無く、送別会や合宿で一緒に食事をとる程度だ。それだけしか知らない。その時の印象としてはまあ、そこそこ食べる人だな、程度だ。学校でも特に大食いでもなければ小食というわけでもない。お弁当と、足りなければ購買や学食でちょっとしたものを食べるくらいのいたって普通の高校生男児の食事量だ。俺にもそれが孝成さんの普通だけれど、高見先輩は試合後の孝成さんは異常なほど食べる、と言うのだ。胃がおかしくなったのかと心配するほどだと言うから本当にいつもとは全然違う量を食べるのだろう。残念ながら俺はそんな孝成さんには遭遇したことがないから都市伝説みたいに思っているけれど。

「藤代先輩って、そんな感じでしたっけ」

「なに、中学の時はもっと俺様だった?」

「高見先輩」

「いえ、そんなことは…ただ、もっとこう…強かった、というか…」

「一年。中学と高校じゃレベルが違う。大学生と高校生も違うし、社会人になっても違うだろ」

深丘です、と一応耳打ちするとまた頭を掴まれてぐしゃぐしゃに髪を乱れてしまった。
そこに孝成さんが戻ってきて、俺の髪の毛を笑いながら直してくれた。深丘は少しだけ気まずそうに視線を泳がせ、自分の練習に戻って行った。

今はまだいつもの孝成さんだけど、これが一日一日段々変わっていく。試合当日に向けて。負けるまで続くそれは、たとえば“インターハイ優勝”で試合を終えたならどうなるんだろうか。去年のような、泣きそうな顔はまず見れないはずだ。じゃあ…

「葉月」

「、はい」

ゆっくり、穏やか孝成さんが張りつめていく。その感覚が分かる。指先の力の入り具合、目つき、姿勢、背中、全身から。




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