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数分でアパートまで来てくれた救急車に孝成さんを乗せ、そのまま病院まで付き添った。病院に着いてから俺はやっとバスケ部に朝練を休む連絡と、一限の代返を頼むメッセージを入れた。震える指で打った文章には誤字があったけれどそのまま送信ボタンを押した。まだ胸がドキドキしている。全速力でフルマラソンを走りきったような胸の苦しさに、気分が悪くなるのを感じるほど。

俺は一人、孝成さんが運び込まれた部屋のドアが開くのをずっと見つめて待っていた。めちゃくちゃ長く感じたけれど、そこから医者が出て来て「寝不足と疲労ですね」と俺に告げるまではほんの短い時間だった。

「寝不足と疲労?」

「はい。健康状態に問題はありません」

「……はぁ〜…」

そのあと病院が孝成さんの家族に連絡をとってくれ…水城先生のところの、と話しているのが聞こえたから医者のネットワークみたいなものでもあるのかもれない…俺はせめて家族が来るまでは、と眠る孝成さんの脇で点滴がぽとりぽとりと落ちるのを見上げていた。

「寝不足と疲労…」

改めて言葉にすると安心するような、けれど全然良くない。夜中まで勉強していることは知っていても、寝不足で倒れるほどだったのか分からない。そりゃそうだ、自分の体ではないのだ…そう思うと、孝成さんが俺よりも俺の体のことを気にかけてくれていた頃、一度も怪我や病気をしたことはなかったなと思いだし、とても情けなくなった。
一番近くに居ると浮かれて、全くこの人のことを見ていないではないか、と。

「……孝成さ─」

「お兄ちゃん!?」

「っ、」

「だい、あ…」

「えっと…」

白い手を撫で、項垂れて彼の名前を呼ぶのと同時にすごい勢いで病室に入ってきたのは知らない女の子だった。

「あ、葉月、さん?」

「……はい」

高校生くらいだろうか。
とても華奢で小柄だけど、顔は大人びている。

「妹の明日香です」

「っ!?あ、妹さん……」

俺は慌てて立ち上がり、パタパタと駆け寄ってきた体が通れるようベッドから数歩後退した。妹、妹…この子が…似てない、率直にそ思ったけれど、近くでその横顔を見るとシャープさはどことなく似ている。何より、爽やかな柑橘系の匂いが彼女が妹であることを決定付けた。




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