03
あっ、と思ったときにはもうその腕をひき、顔を寄せて唇を合わせていた。その時ふっと懐かしいような胸がざらつくような匂いがして、反射的に「会ってたの、妹さん?」と問うた。
「正解。なんで?」
「いや、あの…匂い?で」
「あはは、番犬みたい」
柑橘系の、爽やかな匂い。
妹がいてたまに会いに来る、という話を聞く前は気になっていたはずなのに、なんだか久しぶりに感じたそれ。孝成さんは離れた唇を再び重ねようと、ゆっくり目を伏せた。それに吸い寄せられるようにもう一度キスをして、その体を抱き上げた。
「うわ、」
「冷めないうちにお風呂どうぞ」
「ありがとう」
妹と会っていたのか、そうか、会えるところに住んでいるのだろうか。金曜の夜だし、どこかホテルをとっているのかもしれない。でも正直、他の知らない誰かと居たと聞くよりずっと気分は良い気がする。
孝成さんをバスルームに押し込み、着替えとタオルは出しておきますと伝えると、孝成さんはドアを閉めようとした俺を引き留めた。
「どうしました?」
「手伝って」
「?」
「服。脱ぐの」
「はい?」
「一人だと葉月のこと待たせるから」
「えっ、あ…」
「また先に寝るつもりならいいけど」
「てっ、手伝います」
それは、つまり、このあとそういうことをしてもいいよと、しようと、誘っている…と受け取っていいんだろうか。キスだって、今日はたくさん出来た方で、それだけでも俺は浮かれてしまっているのに…
「妹が、葉月に会いたいっていってた」
「へ、あ…俺も、会いたいです」
震えそうな指に力を込めて、裏表がひっくり返った上着を剥ぎ、Tシャツとその下のインナーをまとめて脱がせる。
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