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一月下旬から始まった新人戦は優勝。地区大会でも優勝。県内トップの実力がそのまま次の学年に受け継がれたことを証明した。
「葉月さ、先月の月バス載ってたじゃん、あれ結構格好良いって評判だったよ。夏より格好良くなったって。今回も新人戦目立ってたし、学校も取材来るんでしょ?羨まし〜」
「……」
「ほら、先月の切り抜いといてあげたから」
「うるせーよ、なんで切り取るんだよ。てか部屋入ってくんな」
「テスト勉強?偉いね」
「出ててけ」
「頭悪いのに良く通えてるよね」
「だから勉強してんだろ。香月も学年末じゃねぇの」
「んー、まあ、大丈夫でしょ。葉月のとこと違って勉強勉強って言われないし。まあ、留年しない程度に点数とれれば良いかなって感じ」
高校に入ってから香月が家で勉強しているところなんて見たことがない。俺がテストの度「なんでそんな勉強するとこ入ったの。葉月頭良くないのに」と言われ、それでも県内ではトップ争いをするチームだ。ただ、県外に出るという選択肢もあった。それを蹴って、自分で選んだのだから文句は言わない。一般で入るよりは免除されている部分も多いし、むしろ感謝するくらいだ。
「でもさ、葉月のとこって進学校じゃん。葉月も大学行くつもりなの?」
「さあ、どうだろうな」
「まあ、実業団とかでバスケするのもアリだけど、葉月は大学でまた全国とか目指す方が良さそう。それから社会人バスケって感じ」
「香月」
「はいはい、退散しますよ〜」
すっかり集中力は切れてしまった。
香月のその手の質問は初めてじゃなく、とにかくやっと高校生になって、孝成さんとバスケが出来るようになって、気付けば一年。確かに考えなければいけない。特に進学校のうちでは。それは分かっている。頭で分かっていても、どうしても今は孝成さんをインターハイで勝たせたい気持ちが先走っていて、考えられない。
先のことが分からないというよりは、考えることを放棄しているのだ。
「……まじで集中力切れた」
気分転換にジョギングでもしたいけれど、その時間も勉強にあてないとまずい。テスト前とテスト期間中はバスケ部で勉強会が開かれる。と言っても、対策問題をそれぞれ勝手に進め、顧問の先生に質問できるというだけのものだ。
それが終わって家に帰れば自主学習。
スパッとなくなってしまったやる気をどうにか取り戻そうと、香月が置いていった雑誌の切りぬきを手に取る。そこに写る自分は確かに自分で、他のチームメイトも小さく写っている。孝成さんは試合しか見せない鋭い眼差しでじっと正面を見据えている横顔で、ここだけ切り取って携帯に貼り付けたいと思った俺は重症だ。
『ヴーヴーッ』
「っ、え、あ、もしもし」
「葉月?」
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