12
食事のことは何となく分かったけれど、他の家事はどうしているんだろう。洗濯も掃除も、孝成さんがしている想像がつかない。でも、部屋は片付いているし…誰かがしている、とか…は、ないよな。多分、きっと。
孝成さん自身に生活感がないのが原因だけど、すっとぼけた彼を知っている俺としては心配で仕方がない。
大学にもこんなふざけた格好で通っているのかも、とか。
「なに?」
「……」
「ん?」
「何でもないです。食べたらコインランドリー行きましょうね」
「そうだった。そのまま買い物もいこう」
「はい。あ、着替えしてくださいよ」
「この格好では外出ないよ」
「ズボン前後ろ反対ですよ」
「……ほんとだ」
「寝癖もすごいですし」
髪を触ろうとした海苔のついた彼の手を止めてぴょんと跳ねた部分を押さえ付けると、そこが昨夜シーツで乱れていたのを思い出して目の奥が熱くなった。指の先も一気に熱を帯び、素早くそこから離れた。
「あの、孝成さん…」
「うん?」
「平気、ですか?その、からだ…」
「…ふ、大丈夫ではないけど平気」
「えっ!?」
「男だし頑丈だから平気だよ。起きてすぐは動けないかと思ったけど、もう大丈夫」
「俺一人で買い物行けるんで、孝成さん休んでてください」
それで帰ってきたときドアに凭れていたのかと納得したものの、それほどふらふらなら外に行かせるのは悪い気がする。というか大丈夫じゃないならなおさら。
「起きたときに葉月が居ないから驚いたんだ。それで勢いよく起き上がったらあちこち痛いのとだるいのでふらついただけ」
「すみません…起こすのも悪いかなって…」
「だから今度は一緒に出るよ。着替えだけ手伝って」
「あ、はい」
朝食を食べ終えてから着替えを引っ張り出してきた孝成さんは、やっと不恰好なパジャマを脱いでくれた。
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