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白い天井に白い壁、布団二組、電気スタンド。脱ぎ散らかした服とパンツ。よれたタオルとビニール袋に押し込んだつもりで無造作に飛び出たぐしゃぐしゃのティッシュ。電気スタンドに下に開封住みのコンドームの箱とローションのラベル。

「……」

「すー…」

そうか、孝成さんとしたんだ…
隣からの寝息にはっと記憶が甦った。

目を開けて、孝成さんの綺麗な横顔がすぐ近くに見えて、孝成さんの匂いに包まれていて、数時間前にこの人とセックスしたのが夢だったのでは、と不安になる間もなく一気に目が覚めた。

「っ、さむ…」

この部屋にはエアコンも暖房器具もなく、裸で布団から出ると地獄のように寒かった。俺はいそいそとパンツを穿き、かき集めた服を被って布団に戻った。
合宿中に孝成さんの寝顔は見たことがあったけれど、こんな風に疚しい気持ちで下心を隠さないで見てみると、なんとも色っぽくてこれが自分の恋人なのかと不思議な気持ちになった。

恋人…孝成さんの恋人は俺でいいんだろうか…せっかく幸せな気持ちで迎えた朝なのに、ふと過ったそんな不安に嫌な動悸がした。だってこの人の家は代々医者で、お兄さんは継ぐために恋人と別れている…卒業するときの孝成さんも、同じくらいの覚悟をもってバスケをやめたのに…

「ん、」

ダメだ、やめよう。
そういうことを考え出したら、今じゃなくていい余計なことまで考えてしまう。時間はまだ八時、朝食の用意でもしようかと眠る孝成さんの額にキスをして布団を出た。
ドアを開けたまま、ダイニングにあった暖房を入れ、「孝成さんって朝何食べるんだろ…」と、冷蔵庫を開けようと伸ばした手を止めた。
そもそも人の家の冷蔵庫を勝手に開けるのもやっぱり、うーん、と思えるし、コンビニにでも行くかとズボンを替えて上着を着て部屋を出た。

確かアパートの近くにコンビニがあったはず。外は年末の静けさを保ち、今にも雪が降りだしそうな空だった。アパートからすぐのコンビニでおにぎりとパン、のど飴と、なんとなく食べたくなったチョコレートを買ってすぐに今来た道を戻った。
建物が密集しているけれど、都会、という感じはそこまでしない。電車ですぐの場所に栄えた場所が広がっていて不便はないし大学も近い。なにより孝成さんがいる。なるほど、ここに住むのを断る理由は何もない。




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