09
「はぁ、は、あ…」
「はー、…」
「すみませ、布団…」
「いいよ、明日、コインランドリー、持ってこう…」
壊れそうなほど早く動く心臓の音を耳の奥で聞きながら、孝成さんを抱き締めて隣に横になると、所々しっとりと冷たい部分があるのが気になった。用意してくれていたタオルで孝成さんの足とお腹を拭き、やっと自分のモノを引き抜く。その瞬間、奥にきゅっ、と引き止められた気がして射精して萎えたものにまた熱が集まった。
「葉月、」
「ご、ごめんなさい、何でもないです抜きます」
引き抜いたモノからコンドームを剥ぎ、孝成さんのお尻を拭いてから自分もべとべとになっている部分を軽く拭いた。
汗ばんでいた体に部屋の冷たい空気は心地よかったけれど、すぐに寒くなって頭まで布団を被った。孝成さんとセックスしてしまった、という非現実的なことを、それでも現実だと受け入れるのにはまだ時間がかかりそうで…素っ裸の感触に身を委ねて目を伏せた。
「…葉月」
「はい」
「俺も、好きだよ」
「っ!?」
「うわ、なに」
「そういう大事なことは、俺のこと見て言ってください」
「そこのライトも消したから、もう顔なんて見えないだろ」
「俺は見えてます」
「……」
「…え、本当に見えないんですか?」
「結構目悪いんだよ」
ずりずりと俺の腕の中で体の向きを変えた孝成さんは、鼻先が触れるほど距離を詰めて「ここなら見える」と改めて“好き”と言ってくれた。こんなことがあるのか、バスケ以外で、こんなにも何かを大事で愛しいと思ったことはなくて、また泣けてしまって、でも見えてないならいいかとそのまま軽く唇を重ねて眠りについた。
「泣きすぎ」と、小さく小さく笑った孝成さんの声が、半分意識を失った頃に聞こえた気がした。
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