07
孝成さんとこういうことをすると、想像したことはもちろんある。それはいつだって俺が孝成さんを抱いていたけれど、そうか、この人に自分が抱かれるという選択肢もあったのか…物理的にはその方がお互いに負担がかからない気もする。それも無しじゃないなと思えたのは、彼が男前であると知っているから。
まだ体は繋がっていないのに、精神はすっかり抱かれている気分だからだ。
そんなことを数秒考えた俺に、孝成さんは驚いたように目を大きくした。
「はは、それもアリなんだ」
「えっ?あ、いや、アリ?というか…俺もう半分孝成さんに抱かれてるような感覚なんで」
「え?」
「孝成さんって男前じゃないですか、中身も。男前っていうか…見た目のさらっとした感じからは想像つかないくらい男っぽいっていうか。や、だから、自分が抱かれるって考えたこと無かったんですけど、精神的には抱かれてたみたいだ、な…って…」
答えになっていないと孝成さんは笑って、今日はよく笑うなあ、綺麗だなあと俺は場違いなことを思った。
「ああでも、こんなでかくてごつくて萎えるって言われるのもショックなんで、出来れば─」
「俺、葉月のこと抱けるよ」
「えっ、」
「普通に」
「えっ、あ、え?」
「でも俺、抱かれる想像しかしなかったから、うまく出来るか分からないけど」
「ちょ、ちょっと待ってください」
「ん?」
「想像って…」
「葉月はしなかった?」
「しましたけど!してましたけど…ああ、もう…そういうところですよ」
「まあ、俺もやっぱり出来ないって拒絶されたらさすがに─」
「それはないです!!」
ムキになって服を脱ぎ捨て、晒した肌を重ねるとぞっとするほど気持ちが良くて。あっけらかんと話す孝成さんにひっこんだ涙がまた顔を出した。耳元で、孝成さんの呼吸する音がする。造形物のような完璧さが、それによって崩れ、とくんとくんと心臓が動いていることに安心した。
「孝成さん」
「ん、」
「……ください」
ひゅ、と空気の冷たさに一度肩が震えた。けれどすぐに孝成さんの体温と馴染み、「はい、優しくしてください」と、返事をされる頃にはそんなものもうなくて。俺は溢れる涙を抑えられないまま孝成さんの足を開いた。
「はづき、まだ、泣いてる?」
「泣いてないです」
「そう、じゃあ、汗か」
「……」
「暖かいのが…落ちてくる、ん、」
「汗です」
孝成さんの体は硬かった。どこもかしこも。けれど、肌の感触や筋肉の弾力、中の熱さにこの行為の無生産さを感じることはなく。今日、こういうことをする為にコンドームとローションを孝成さんが用意していて、後ろも綺麗にして、それでも苦しそうに眉を寄せて、ああ、今繋がってるんだ、と思うとやっぱり涙は止まらなくて。
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