転校生と俺2 (1/2)


夏目が三メートルほど遠くに居た。声を聞いて振り返った俺は、家で寝ていなかったのかと思った。まあ、あの家にいたくないと思うのはわかるけど。

「……」
「…」

夏目は俺をチラリと見たけれど、すぐにその視線を地面に落とした。鼻が少し赤い。よく見れば、夏目が巻いているマフラーは、こいつにあわないくらい薄くて短そうだった。
……てか、だんまりかよ。
夏目は俺のことを知っているのだろうか? 知らないだろうな。

「…よう、夏目。調子はどうだ?」
「え、ああ…うん。もう大丈夫だよ、ありがとう。…えっと、相川」
「あれ、おまえ俺のことわかんの?」
「うん。…同じクラスだろ?」

夏目が不安そうな目でこちらを見ていた。何か違うのか、と問いかけている目だった。

「ああ、同じクラス。ただ、俺あんまし教室にいねえし」
「…そうだな。相川はいつも教室にいないな」
「そうそう、だから意外だったんだよ。何でおまえが俺のこと…ああ、なるほど」

入れようとしていた封筒を引っこ抜き、夏目の方へ歩く。俺の行動を見ながら、夏目は不思議そうに首をかしげた。

「おまえ、クラスの奴らに聞いたんだろ、俺のこと」
「……」

俯く。俺の推測はビンゴだったらしい。まあ、転校してきてからすぐに注意されたんだろう。あいつには近寄らない方がいいぜ、みたいに。
くだらねえ。

「ほらよ。おまえが休んでたぶんのプリントとか。ちゃんと渡したからな」
「あ、ありがとう…」

それ以上は何も言わずに夏目の横を通りすぎた。早く家に帰んなきゃな。夏目は耳も赤かった。寒そうだな。

家に帰ると、誰もいなかった。しまった、今日は俺だけだったんだ。別に急がなくてよかったな。
自分の部屋に入り、ベッドにダイブする。睡眠は充分とった筈なのにあくびが出てくる。充電器をさしっぱなしの携帯を手に取る。親からのメールが一通。目を通してすぐに削除した。


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