転校生 (1/1)



俺のクラスに転校生が来た。
名前は夏目。夏目貴志。
愛想笑いを浮かべながら自己紹介をしたそいつの印象は、

(…胡散臭えやつ。)

だった。
そいつの笑顔は矛盾に溢れていた。
悲しそうに笑ってる。悲しいのかよ、じゃあ笑うなよ。時折見せる、遠くを眺める顔に俺はイライラしたこともあった。
そんな夏目には変な噂があった。

ーー夏目くんって、嘘つきなんだよ
ーー夏目は、変なものが見えるらしい

くだらねえ。でも、納得できた。嘘つきってとこは、あいつが浮かべる愛想笑いで解決。
変なものが見える、これもまあ、思い当たる節があるな。誰もいない場所を見て、肩をビクつかせてたりする。まるで、そこに何かがいるかのように。
夏目には友人と呼べる存在がいなかった。誰も夏目に近づこうなんてしなかったし、夏目も誰かにちかづこうなんてしなかった。

「相川くん、聞いているの」
「あ……?」

正直、聞いちゃあいなかった。
目の前にいる担任が顔をしかめる。

「相川くん、貴方は学力はとてもいいのだから、進学校に行ったほうがいいと思うの」
「学力は、ねえ……」

まるでそれ以外は駄目だというような言い方に、俺はため息をついた。高校受験なんて、俺にはまだ早い話だった。まだ中二だぜ?
一年後のことなんて、俺にはわからねえし、今はまだ考えたくない。
でも先生がたはそうではないらしく、今からでも遅くない、しっかりと学業に本腰をいれて日頃の態度を改めろとしつこく言ってくる。めんどくさいったらありゃしねえ。
俺はまだ、このままでいたいんだ。


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