転校生の噂 (1/2)

夏目と話すことが多くなった。
いや、そんなにしょっちゅう喋るわけではない。ばったり会ったときに少し話すだけだ。それでも、夏目の俺に対する雰囲気が変わったような気がする。
あくまで気がする、だけだが。

「おー、夏目。おはよ」
「ああ、おはよう。今日は早いんだな」
「まあな。今日は早くに目が覚めたんだ」
「そうか」

家が近いから、よく通学路で会う。そしてそのまま登校。最近、俺は学校に指定されたとおりの時間に登校していた。胡散臭いと思っていた夏目に対する気持ちも、好意的なものに変わっていた。
つまり、だんだんきちんとした生活を送るようになったのだ。なぜかは分からないが、担任も心配事はなくなったとばかりにため息をついていたので良しとする。

「夏目、国語の時間寝るからノートよろしく」
「またか? ちゃんと授業を受けろよ、成績悪くなるぞ」
「何それ今更すぎる」
「とにかく、今日は起きていろよ。ノートは貸さないからな」
「えー……、夏目も言うようになったなあ」
「そうか?」
「おう」

喋るようになってからは、夏目にノートを借りるようになった。夏目のノートは、男のくせにキレイだ。決して歪むことのない文字、鮮やかに使われるカラーペン。優等生のノートじゃねえかよ。

「あ、そういや夏目」
「なんだ?」
「土曜日暇か?」
「そうだけど…どうかしたのか?」

不思議そうにこちらを見ている。うん、なかなかいい反応。

「土曜日に海行くんだけどさ、お前も来ねえ?」
「海? …こんな真冬に?」
「あー、チビッ子どものご希望で」

俺に兄弟がいることを思い出したらしく、なるほどな、と夏目は頷いた。

「どうよ? 行くか?」
「俺も行っていいのか? …その、親御さんとか」

もごもごとマフラーの中で呟かれた言葉は、どこか寂しそうだった。俺の親が自分のことを嫌がらないか、という不安に俺は少し顔を顰める。
夏目は、どこか人の顔を伺うようなところがある。大抵笑顔で誤魔化して、有耶無耶にしてしまうところもある。
誰かの都合に合わせるのが当たり前だと思っているのか、そうしなければいけなかった理由があるのか。

「んなこと気にすんなって。親は来ねえし、一人でお守りも大変なんだよ」
「え、来ないのか?」
「おー、忙しいんだと」





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