転校生と俺 (2/2)

ムカつく。
その一言だった。思い出していたのは、担任と交わした言葉だった。

『…俺、夏目くんと喋ったこと無いんですけど』
『それは……』

あの時の担任の目。
それは、みんな同じよ。私もね。
そう言っていた。それを認識した途端、俺は何だか腹の中がむかむかしてきたのだ。なんでだろうな。

「……! ………!!」
「……!? …!!!」

「……なんだ?」

誰かの話し声が聞こえる。自分の家の前を通りすぎ、夏目が住んでいる家へ歩いているときだった。大人の声だった。何かを言い争うような、でもなるべく小さくした声。気のせいだろうか、俺の目的地から聞こえる気がする。

「だから嫌だったのよ、気味が悪い! だいたい、世間体があるからこの子を引き取っただけなのに…」
「おい、やめろ。あの子に聞こえるぞ」
「何よ! 貴方だって、あの子に早く出ていって欲しいくせに!!」
「お前なあ、少しは我慢しろよ。どうせすぐに別の人が預かるさ」

……なぁーんか、気分が悪い会話してんなあ。てか、外まで聞こえてんぞ。どうすっかなあ、俺はプリントを届けに来たわけだけど、この状況だとなあ…。よし、郵便受けに入れるだけにしておこう。
幸い、担任はご丁寧に「夏目くんへ」と書かれた大きな封筒にプリントを入れてくれたから、家の人が見てもちゃんと夏目に届くだろう。

「……あ」
「あ?」

郵便受けに封筒を入れようとしていると、後ろから声が聞こえた。どっかで聞いたことのあるような声。誰だ?
封筒を半分だけ郵便受けに突っ込みながら後ろを向くと、そこには寒そうにマフラーに顔を埋める夏目がいた。


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