転校生と俺 (1/2)


夏目は一人だった。
俺も人のことを言える立場じゃねえけど。
俺は素行が少しだけ悪かった。自分でもちゃんと自覚してる。直そうとは思わないけど。

まず、朝のHRは遅れていく。担任が連絡事項を伝え終え、朝の読書とやらの時間の途中に教室に入る。国語とか英語の時間はたいてい寝てる。
教科担当の先生の声が子守唄みたいで、ついつい寝てしまう。数学や理科などは頭を使うから目が覚めてる。やる気がおきないときなんかは保健室に入り浸ってるし、体育祭が近づくと学校は休む。そんなことばっかしてるから、クラスの奴の顔や名前が一致しない。そしたら俺は他の中学の奴とつるんで喧嘩ばっかしてるだの、変な噂が流れ始め、それが俺に対する認識になってしまった。誰だよ、噂を流した奴は。
だいたい、喧嘩に明け暮れるほど俺は暇じゃない。家に帰ったら、帰りが遅い親に代わって下の小さい兄弟たちの面倒見なきゃいけないし。
まあ、そんな噂を放っておいた結果がこれなんだし、今更 文句は言うまい。

話が大幅にずれた。夏目の話だった。
夏目は、肉親がいなくなってから、親戚をたらい回しにされているらしい。現在進行形で。今回、俺らの学校に転校してきたのも、預けられた親戚が変わったため。
なんでそんなこと知ってるかって?
噂の力をなめちゃいけねえ。別に聞こうと思ってないのに耳に入ってくるのが、噂ってもんなんだ。
そんな夏目が、風邪で学校を休んだ。それも一日じゃなくて、四日。月曜日は普通に来ていたが、火曜日になってから金曜日の今日までずっといなかった。夏目が現在 預けられている親戚の家は、どうやら俺の家の近くらしい。
いつもどおりつまらない授業は保健室でサボっていた今日、放課後に担任からプリントの束を渡された。
「何すか、これ」
「相川くん、夏目くんと家が近いみたいだから、届けてくれないかしら。地図もちゃんと書くわ」
「…俺、夏目くんと喋ったこと無いんですけど」
「それは……」

あ。
今、こいつ。

「……わかりましたー、早く地図くれませんか」

そうね、と少し慌てながら渡された地図を手に、俺は今度こそ帰る。校門を出たところで地図をちゃんと見る。なるほど、俺の家を少し過ぎたところだった。確かここの家、近所付き合いがあんまし良くなかったな。



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