詐欺師は狐と仲が良い


白智に何か買ってくるから先に行っててくれ。
菊弘は貝木にそう言うとさっさと買い物に行ってしまった。

菊弘は子供(自分よりも年下の者も含む)に対して、大分甘い。
白智は要らないと遠慮してぶんぶん首を振っていたが、菊弘は見てない振りをした。

白智と貝木、そしてコスプレ男はホテルの部屋に居る。
「貝木さんでしたっけねえ」

コスプレ男は白智の背後に立って、貝木と向き合った。
「貝木泥舟だ、その貴方は」

貝木が言ったとき、白智が急いでスケッチブックに何かを書き出した。しかしそれを背後の男が止める。
「いいよチロちゃん、あたしのことが見えてるんだ。あたしが喋るよ、ね?」
あ、そっかというような顔をして、白智はその手を止めた。
筆談よりも口上の方が早い。

「まあまずこのチロちゃん、摂津白智のことを説明するねえ。あ、チロちゃんってのはあたしが付けたあだ名だよ。シラチのチとシラ…白(しろ)のロね。ちなみにあたしはポン太ってあだ名だよー」
「ぽん…た…??」

貝木は思わず口角が上がった。見てくれはどう見ても狐なのに、狸のようなニックネームだ。
「笑ってくれて構わないようデイちゃん、あたしもこの名はお笑いで名乗ってんだからねえ。それでも大切なしと(人)に付けてもらった名だから気に入ってんだ」
勝手にあだ名をつけられて文句を言う貝木ではない。
それよりも、大切な人―と言われて貝木は白智を見た。
すると白智は貝木の心意を読み取ったのか『私ではない』と言う風に胸の前で両手を振った。

「まあそれはいいさね、あたしはこン子に憑いてる天狐って種類の狐でね。こン子は狐憑きってわけさ。その筋の者にはあたしのことが感知出来るんだけどデイちゃんはあれだね、深淵を覗くものはまた、深淵に覗かれてるってやつだねえ」
「はぁ…」

心当たりがあって貝木は少しだけ身震いした。
「じゃあなんで菊弘は見えないんだ」
「きっちゃんはあれじゃあね、あのしとは昔ッから見える人じゃあないからねえ。こン子が狐憑きってことも知ってるし天狐っていうあたしが憑いてるのも知ってるけど、感知は出来ないんだよ。まあそういう仕組みってやつさね」
「で、その今回のことについてあいつはあんたらが関わるんなら手を引くって言ってたんだが?それについてはどういうことだ、あいつは別に狐ごときに物怖じする奴じゃあないだろう」

貝木は、白智もポン太も、菊弘の旧知と分かっていてずけずけと物を言う。
「はっはっは!そりゃあんた、あたしらが扱うモンがそれ相当だからねえ。きっちゃんには到底手出しの出来ないものなんだ。幽霊とかならまだいいよ、悪霊とかそういう禍々しくて強いものを祓うのが、こン子の仕事だからねえ。きっちゃんがどんなにすごい人でも専門外だから手出しも出来なきゃ助けも出来ないんだ」

悪霊。
それを聞いて貝木ははて?と首を傾げる。
「その、お前たちは例のサークルに何か悪いものが居るからそれを祓いに来たんだよな?」
「そうだよ?」

白智も頷く。

(だけど菊弘は)

貝木は考える。
悪霊がいるから下がろうじゃなくてお前たちが関わっているから下がろうというような感じだった。さっさと引き上げようと。





「そりゃお前、順番が逆だぞってことを言いたいんだろうけど」

風呂上がりの菊弘は、ぐびぐびと音を立ててビールを飲む。
ベッドに寝転がり、貝木は菊弘の答えを待っている。

「そもそも白智も天狐も別に嫌いじゃないし、そういう意味で避けてるわけじゃないってことくらいはお前も分かってるだろ?」
「まあな」

あの後菊弘は白智に色々買い与えていた。
コンビニに行ったとばかり思っていたが、駅ナカで色々とショッピングしていたようで。
「ほら寒くなってきたから」
と、手袋を渡して
「ホッカイロあると便利だぞ」
と貼るタイプのカイロの小包を渡して
「この植物由来のクリームはな、髪にトリートメントとして使ってもいいしもちろん顔や体にも塗っていいんだ」
と、いくつかの美容品を渡した。

受けとる度におろおろと狼狽し、白智は何度か要らない要らないと首を振ったが菊弘は見ない振りをした。
「まるでおばあちゃんだな」
貝木が皮肉を込めて言うと、逆に菊弘は満足そうに胸を張った。
「そうだよ?私は白智のおばあちゃんみたいなもんだもの、だからいっぱい上げるし白智は受け取らないといけないんだぞ」
{ありがとう菊弘さん}

困った顔のまま、白智はスケッチブックを掲げた。
天狐のポン太はというと、あの後とりとめもないどうでもいい世間話で盛り上がって、しまいには貝木に自分のInstagramのIDを教えていた。
「こン子の爪借りてネイルの写メあげてるからさ!たまに見てねえ」
なんとも女らしい狐だった。


菊弘はビールを片手に語る。
「いいか、憑き物筋ってのがある。狐とか犬とか、中には蛙とか虫など憑く家系もあるが…白智の家計は代々狐憑きで、その狐の力を使って占いだとかお祓いだとかやってるんだが…それは家に憑く場合だ、白智の場合は個人に憑いてる。だから強力なわけでな?なんでも出来るぞ、祓いも占い…いや最早占いというより簡単な未来予知だな、もちろん白智の守護も。天狐が自ら憑く者を選んでるんだ。普通ならありえない、家に憑くものが個人に憑いて、しかも協力してくれるんだから。相当の負荷だが白智は才能でそれをカバーしている、あいつすごいんだよ」
「そう、なのか」

喋らないただの女子高生だと思っていた。

「だからうちの上司がチームに入れて監視してる、あと協力も仰いでる。白智は良い子だから力を貸してくれるが、いつどうなるかは分からないからな〜反抗期があるかもしれない。だから私もあの子の監視の令は出ているよ、それだけの強者だ」
「喋らないのは、なにかワケがあるのか」

貝木がそれを聞くと、少しだけ菊弘は嫌な顔をした。
しかし答えてくれる。
「まあ、彼女は子供だし色々あるさ。我々は言葉で何でも出来るからな」
文字通り、言葉通り。
そう言って結んだ。
貝木は菊弘がそれ以上は言ってくれないので、まあなにかあったんだろうなと心に留めておいた。
「で、話を戻すが。とにかくすごい力の持ち主だから仕事の依頼もそれなりのものが来るんだよ、だから私は白智の案件には手を出さない。な?分かったろ?結び付いてんだよ、順序が逆でも」
「なるほどな、じゃあ俺が明日また白智たちと会うって言ったらどうする?」

菊弘は心底不可解だというような顔をして、あとは何も言わなかった。
勝手にしろ、ということなのだろう。
だから貝木は勝手にした。

(なんか、急に菊弘の態度が冷たくなったな…)
少しだけそんなことを思いながら眠りについた。





翌朝、待ち合わせに選んだファミレスに行くと相手は先に待っていた。
隅の方の席に白智は居た。

{お呼びだてしてすみません}

スケッチブックに小さく書いていく。続きがあるようだ。

「いや、こちらも情報は欲しいので大丈夫だ」
{それなんですが、}

白智は困った顔をした。
{本当にまだあのサークルと関わるつもりですか?}
「そりゃまあ、こちらとしては良い案件だったので引けないんでね。もしも君に依頼した人間が俺に手を引くようにある程度の金を用意してくれるのなら話は別だが」

まあそれでも貝木は、その手切れ金を受け取っても手を引くことはないのだが。
貝木が手を引くときは、自分に損害しか無いときくらいだ。
もし自分が損をするならさっさと尻尾を巻いて逃げ出す。

と、目の前に黒い尻尾がふわふわと横切った。
「懲りないしとだねえ、きっちゃん怒るよ」
ポン太がぷんぷんと怒ったようなジェスチャーをした。
「なにかあったらポン太が守ってくれ」
貝木はいけしゃあしゃあと言う。
「まあ!なんてしとだろう!」
ポン太がけらけらと笑うと、白智も笑った。



{私たちが調べた時点で分かっているのはこれだけです}
白智は一冊のファイルを、貝木に渡す。
B5サイズのルーズリーフに、手書きで色々と書いてある。
仕事の際はこうやって自分でまとめておくらしい。
貝木は、白智のスタイルに好感が持てた。


人狼遊戯殺人事件、とタイトル付けされた用紙には様々な事が書いてあった。
だが、殺人事件と言うわりに『事件』にはなっていない。
被害者と称される者たちはみんな、あのサークルで人狼ゲームのプレイヤーに選ばれた者たちの何人かだった。
怪我や事故、そして自殺。数ヵ月するとゲームのプレイヤーは何かしらそういう不幸に見舞われるらしい。
人狼側がどうとか、市民側がどうとかそういう法則は無い。
とにかくゲームに参加したプレイヤーが、数ヵ月以内に怪我をしたり事故を起こしたり自殺したりするのだ。

「つまり死人は自殺者ってわけだな?」
貝木の言葉に白智が頷く。
「じゃあ殺人事件っていうのはおかしくないか」
その言葉に白智は少し考え留まり、困ったような顔をした。
白智はスケッチブックに書く言葉を探しているようだ。
そこにポン太が助け船を出す。

「まあデイちゃんがそう言うのも分かるよ。でもこれは明らかな悪意があってわざと怪我や事故が起きているのね、自殺も同じ。あのゲームに参加した人間はみんな何かしらの影響のせいでそんな目に会ってる。偶然じゃなくて、明らかな悪意の塊によって産み出された必然でねえ」
「それは…暗示の類いでか?」

しかし、その手のプロである菊弘は「暗示も呪術も欠片も感じられなかった」と言っていた。貝木はそれを思い出す。

「ああ、きっちゃんはほら人間の悪意は感じ取れるでしょうけど」

ポン太は言う。
「これは悪霊の類いが人間の意思を操ってるようなもんだからねえ」
「…じゃあ、その怪我や事故は、自殺は人間がやってるんじゃなくて」
{彼らはオオカミ様と呼んでいる、その名の通り、狼、大神。犬神のことだと思う}

白智は写真を取り出した。
今時珍しいモノクロ写真で、しかもポラロイドカメラで撮られたものだった。
そこには、ボサボサの獣の毛の塊が写っていた。

「これチロちゃんが念写したやつね」
さりげなくすごいことを言うので、貝木は目を見開いた。

{これはとある地方に伝わる犬神の毛の固まりです。神社に祀られていたものなんですが最近何者かに盗まれたんです。私はその神社の人に依頼されてここに居ます}

「しかしその、分からないな。なぜ人狼ゲームに犬神が出てくる?犬神ってのは呪術に用いられるものだと思っていたが」
貝木は自分で言ってはっとした。
呪術。
ゲームのプレイヤーを呪っているのだ。

{ゲームの主催者は、賭けをしているそうです。誰が生き残るか。ほんとに人狼ゲームみたいな感じで}
白智は写真とファイルを仕舞った。

「だからねデイちゃん、さっき言ったのはあながち的はずれでもないのよー」
ポン太は、ため息をつく。

そうだ。
貝木は肩を落とした。またか、また俺は巻き込まれたのか。
慣れたようでそうでもない。

{貝木さんも、菊弘さんも危ないので守ります。でもその前にさっさと私たちで主催者を叩くので、出来れば貝木さんのお仕事を}

スケッチブックの上でペンが踊る。
最後まで踊りきる前に、貝木が言った。
「わかった、手を引く」


白智は、昨日菊弘に貰った手袋を付けてそのまま去っていった。
控えめに手を振ってくれたので、貝木も手を振り返す。

さて、どうするか。
貝木はすっかり冷めてしまったコーヒーを飲み干す。
話を聞く限り、自分も菊弘の身も危ない。
菊弘はさっきの真相を知らないでいる。


(やっぱ教えといた方がいいか)

しかし教えない方がいい気もする。
話したせいで意識してしまって、事故や怪我の確率が上がってしまう気もする。それでは思う壺だ。
だが、菊弘の陣中の範囲外のことなのだ。対策のしようがない。

しかしメールで現状はどうかくらいは聞いてもいいだろう。
貝木は短い文で菊弘にメールをした。
意外に返信はすぐだった。

『手を引いたのか』
それにイエスと返事をする。

するとドヤ顔の顔文字だけが帰ってきた。
貝木はなんだか無償に腹が立って、すぐに菊弘に電話を掛けた。

3コールで相手が出る。
『なんだ』
「なんだじゃない…ッ」

貝木の声は大きく、ファミレスの客はみんな貝木に注目した。
しかし貝木はそれをなんとも思わず厳しい口調で続けた。

「どういうことだ、ええ?」
『…どうした、今どこだ』

対称的に菊弘の声は冷静である。
貝木は再び声を発しようとした。しかしさっきの大声で店員がやって来て申し訳なさそうにこちらを見ている。
それにさえ貝木はイラついて、電話を切るとすぐに伝票を持って支払いを行った。

外に出ると相変わらず冷たい風が吹いている。
もはやそれさえも怒りの対象になっているようで、貝木はとにかく頭に血がのぼった。
冷たい風なのに、一向に冷やしてはくれない。どんどん、どんどん熱が上がっていく。

電話が鳴った。
すぐに出る。
『もしもし?どうした、どこにいる?』
菊弘である。
「なんだよ、どこでもいいだろう。お前だって俺に秘密があるじゃないか。俺にも秘密があってもいいだろう」

道を歩きながら声を荒げる。すれ違う人たちが、貝木を見るが特に関心は持たない。
あまり関わらない方がいい、そんな感じでさっさと視線を逸らしてしまう。

『おい、貝木くん。正気か』
少しだけ菊弘の声に緊張が感じられた。
しかし貝木はそれを嘲笑うかのように続ける。
「今さらもう遅いぞ、遅い、後悔させてやる!」

語尾はすでに悲鳴のようだった。
電話に怒鳴り付ける。そしてそのまま地面に叩きつけた。
そしてその勢いのまま駆け出す。

高いマンションが目に入った。
そこを目指して全力疾走する。誰かにぶつかるが気にしない。
最低のフォームだ。
まるで空気の中を泳いでいるような。

マンションの階段を駆け昇る。

13階についた。
貝木は泣いていた。頭ががんがんする。耳鳴りがひどい。鼻水と涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、そのまま階段の外へ身を乗り出した。


死ななくてはいけない。

死んでやる死んでやる死んでやる。
あの、くそ女。
俺をバカにした。俺を見下した。俺に愛想をつかしたあの女。

貝木は足を掛けて、飛び降りようとした。


「やめて貝木さん、今すぐ降りてください」



女の子の声が、耳に届いた。
きいーんという耳鳴りがしていたのが、その声で止まった。

「しっかりして」

体が勝手に動いているようだった。
隣で自分が、自分の体を見ている。
隣の自分が振り向くと、酷い顔をしていた。
血の気は引いて真っ青で、涙と鼻水でぐちゃぐちゃだ。

勝手に動く体は、声のした方に向いた。
貝木も感覚的に振り向いてみる。

「戻って貝木さん」

そこには白智が居た。
高い場所なのに、追いかけてきた気配も無かったのに、息も上がらずずっとそこに居たかのように立っていた。

戻って、と言われて隣の貝木は一体化し、視点が元に戻った。

「菊弘さんのところに帰りましょう貝木さん」

それはとても、幼い女の子の声だった。





貝木は半ば放心状態で、白智の隣を歩いていた。
体はへとへとで、我に帰ると立ち上がることも出来なかった。
だからポン太が体に憑依して、代わりに歩いてくれている。
脳内でポン太の声が響く。

「きっちゃんも言ってたけど、デイちゃんって本当に影響受けやすいのねー。大元を封じたっていうのにきっちゃんから連絡が来たからびっくりしたよお」
「…迷惑を、掛けた」
貝木が咳き込みながら言うと、隣で白智が首を振った。
今はスケッチブックを持っていないので意思疏通が出来ない。
だが、貝木には何となく白智の言いたいことが分かった。

「いや、俺が悪いんだ。最初っから、菊弘に止められた時にちょっとだけ考えりゃよかったんだ。…菊弘だけにゲームに参加させるとかな」
貝木がそう言うと、白智は吹き出して笑った。


やはり呪術関係には、菊弘は強いようだ。
犬神の呪いだろうが、怨霊の怨みだろうが、菊弘には効かないのだ。呪術は全て弾く。
だから菊弘はなんともなかった。

例のサークルの主催者は、オオカミ様―犬神を使ってゲームのプレイヤーを呪っていたらしい。
神社で半ば封印気味に祀られていたものなので、呪術の効力はまばらで、それを利用して『誰が五体満足で過ごせるか』を賭けていたのだ。怪我や事故、または病気でもアウト。自殺してもアウト。
つまり今回の生き残りは、菊弘である。
白智の奔走のかいも無く、呪術は一度掛かってしまえば止められないのだ。
桐の箱の中に仕舞われた、ただの犬の毛の固まり。

白智はそれを大事そうに抱えて、ポン太と共に帰っていった。
駅まで見送ると、やはり控えめに手を振ってくれたので貝木も振り返した。
その爪には、昨夜ポン太のInstagramで見たパステルピンクに黄色の星の小さなビーズの置いてあるネイルが施してあった。


「犬ねぇー、犬神の呪いねえー。そんなん分かるわけないわ」
菊弘はホテルで荷物をまとめながら呟く。
「大方暗示掛けるのと一緒で、あの面接で悩みはなんですかーって物凄く徹底して聞いてたからその辺を利用したんだろうね」
荷物といっても、貝木はほとんど無いし菊弘も手回り品のみだ。

「私は適当に新婚なのに仲が冷えきってる夫婦っていう感じで話したんだけど、もしかして貝木くんもそんな風な相談した?」
「ああ、まあそういう内容だったな」

(それでか…)

貝木は、あの時自分が感じていた不思議な感覚に答えを見いだした。
菊弘に対し、腹の底から湧いてくる怒り。嫉妬。
貝木が―、自分が死ねば菊弘は自分を責めるだろう。ざまあみろ、とやけくそだった。

「白智が止めてくれたんだろ?」
「ああ、そうだよ」

あの時、ボブショートの女子高生は、しっかりとした眼差しで小さな口を開いた。
想像していたよりは。とても幼い声だった。

「声がな、声が」
「ああ?声?」

貝木はベッドに座って、天井を見上げる。立ち上がる気がないようだ。
すでに菊弘は、出る準備が整っていて貝木が立つのを待っている。

「白智の声で、動きが止まったんだ。なーんにも、出来なくなった」

やめて。降りてください。しっかりして。戻って。
菊弘さんのところに帰りましょう。

「おお、声を聞いたか。すごいだろうアイツの声の力。声っていうか言霊の力だが」
「お前の得意分野じゃないか、それ以上ってことか」
「言霊ってのにはレベルも何も関係無いよ、言う人よりも聞く人さ」

聞く人。
貝木はやはり、影響を受けやすいのだろう。

「ほら、さっさと立ちな。行くよ」

菊弘が言うと、貝木は今までそこに根を張っていたというのにさっさと立ち上がった。

(ああ、なるほどな。言う人、聞く人か)








×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -