Morgan


*ここの作品は原作者、出版社、企業団体との関係は一切ありません。

*ご注意下さい
┗取り扱っているキャラクターのいわゆるキャラ崩壊や既存の設定無視など多く見られます
┗取り扱っているキャラクターの扱いが酷い(R18エログロ拷問等)です
┗夢主嫌われではありません
┗作品内で行われる犯罪等はお勧めできません
┗苦情は一切受け付けません

*閲覧は自己責任でお願い致します

名前(愛称or通り名)Morgan モルガン 
性別  女
年齢  26歳
生年月日 未定
血液型 AB型
国籍 アメリカ
住所 不明
出身地 日本
種族 人間と魔女のハーフ
人種 日系アメリカ人
属性(萌え要素) ヤンデレ
人称 一人称「あたし」二人称「きみ」 
言語 英語と日本語
口調 ですますだけどどこか毒々しい 
口癖 ハヒッ(笑い声)

外観的特徴 
雰囲気 モブ、一般人オーラ
容姿
顔 普通
肌 健康的な肌色
瞳 薄い青
髪 ブロンド
服装 流行に敏感 
身長 162
体重 54
体格 アンダー64のCカップ、おしりふっくら
視力 1.2
利き手 右
健康 アレルギー性鼻炎持ち

社会的地位(経済状況)
職業 不明
宗教 無し
資格 秘書検定資格合格

性格的特徴(先天・後天的人格形成)
長所・短所
一途、研究熱心
病んでる
仕草・癖 後頭部をがしがしかきむしる 
性癖 泣き顔が好き
ポリシー 欲しいものは絶対に手に入れる 
思想 他人の事は考えない、自分優先は当たり前
趣味 紅茶
特技 監禁
嗜好 ファッション雑誌は何種類も買う
好物 ホルモン焼き
大切なもの 監禁したもの
弱点 予想外の出来事
嫌いなもの 正義
ヒミツ 魔女の血を引く正当なヴィランズ
知性 監禁対象に関する事に対して研究熱心になる
知識 大卒レベル
武器 無形
装備 無し 
武術 陸軍戦闘スタイル
魔法 悪 
その他能力 狙撃
アピールポイント オールラウンダー 
ギャップ 真面目ぶって犯罪者
生い立ち
┗普通の生活を送っているが裏の顔がありそのおかげで生活をしている  
過去のトラウマ
┗かつての幼馴染みでもあり恋人でもある男が浮気性で尽くしてきたが振られる
家族構成(恋人なども含む)
┗故・父(銀行員)故・母(大きなマフィアの愛人)
故・恋人(大学生)…他の女とセックスしてる時に狙撃されて死亡

○壊れているわけではなく正常な精神なので病んでるというよりかはサイコパスに近い。かつて尽くした恋人にこっぴどく裏切られ「お前がやること全部重すぎてしんどい」と振られそこで何かが吹っ切れて、母が関わっていたというマフィアに前々から組織入りの話が来ていたので、事件を揉み消すという交換条件と共にライフルを貰う。そしてそのライフルを使って恋人を狙撃する。
それからというものマフィアの仕事を請け負いながら好きになった人間を監禁するようになる。

○世界観
ディズニーの世界→キャラクターは全てディズニーの登場人物。
人間世界→ディズニーの世界とはディズニーランドと繋がっているが人間はそちらの世界へは行けない。
Dランドは、D住人の働き口のひとつである。
もちろん人間もDランドで働いている。
ジョーはハロウィン終了後、モルガンに連れ去られ(ハロウィンが終わってジョーはDランドから海へ帰ったがダイビングして待ち構えていたモルガンに捕獲され人間世界へ)モルガンの所有する大きな屋敷の一室の水槽に監禁される。



夢の国。
人間たちはそこに夢を求める。
俺たちは夢を求める人間に、夢を与える。なんでもいい。
にこにこと笑いかけてもいい。
ツンツンと怒っていてもいい。
俺たちがこの場所で生きていれば、俺たちが人間たちの前に姿を表すだけでそれで夢の世界が現れる。


夢の国、D(ディズニー)ランド。

俺たちのD世界を、人間世界にちょっとだけ切り離した場所。
D世界の住人たちには、人間と同じようにきっちりと身分が別れている。
天皇みたいな貴族は城で暮らす。
シンデレラや白雪姫はそういう貴族。
それで俺たちみたいなモブキャラは普通に働かないといけない。
金貨。
通貨は世界共通で何か物を買うときに必要になるものだ。
魔族には必要無いように思えるが、魔法使いや魔女、悪魔だってなにか必要になるとゼロからは生み出せないので、材料を買う。
そうじゃなくても、ちょっとだけ街に出て住民たちから何か買ったりするのが俺は個人的に好きだったりする。
海の中では物珍しいプレートでも、街ではただの食器だ。
それに俺の上司は、人間の世界を知るべきだと半ば強引に『仕事』に駆り出した。

確かに俺も、人間の世界は気になっていた。
人間に憧れた人魚を知っていたから、というわけでもないんだが。

ハロウィン。
そこで夢を魅せる。




意外にも意外、好評すぎただろと俺はちょっと引いた。
それは周囲も似たような感覚だったらしく、角の生えた鏡ばっかり見ているナルシストだけは「ワタシの美しさならば当たり前の結果だね!」と言っていた。
その自信、俺にも少し分けて欲しいものだ。
ハロウィン期間中に仲良くさせてもらった同僚も、これでお別れだ。
消えてしまう奴もいる。俺もきっとそうなんじゃないだろうか。
海の底に帰って、人間世界の報告が全て済んだら、多分用無しだ。
俺は上司の一番の部下らしいが、俺としてはそんなつもりはないし、たぶん世間体とかそういうのを考えて上司が勝手に言ったんじゃないか。

俺が例えば死にそうになったなら、
「ああそうかい、じゃあ死にな」という感じであしらわれるんじゃないだろうか。


同僚たちはぞれぞれ思うことがあるっぽかったが、ヴィランズっていうのはそういうものだと分かりきっているから、みんながみんな同じように悟った寂しい顔をしていた気がする。
楽しかったな。
ああ、楽しかったね。

そんな会話をして、別れた。
俺たちはそれぞれの場所へ帰った。

Dランドの、D世界に帰れる扉を通って、見覚えのある砂浜についた。
あの扉は不思議な力があって、望む場所へたどり着けるのだ。


それはそうと。

すごく疲れていた。
人の形をしているのはとても疲れる。
上司から分けてもらった魔力は尽きていた。
俺は、俺のちっぽけな魔力でなんとか歩いている。

砂浜は足にどんどん絡み付いて、歩みを邪魔する。
それでも海に入ってしまえば、なんとか泳いで海の底にたどり着けるだろう。
水の中にさえ入れば、蛸になって帰れる。

魔力で出来たスーツがずたずたになって砂の上に落ちていった。
でも跡形もなく、崩れてしまって俺がDランドで夢を魅せていた証拠が無くなっていく。
それでも悲しくともなんともなかった。
使命を果たした、満足感に似た何かで俺の心は満ちていた。

足先が、海の冷たさを感じ、そして静かな抵抗を生む。
俺は倒れ込むように水のなかに入った。


沈んでいく人の形をした俺。
重さが丁度良いので、しばらくそのままずぶずぶと沈んでいった。
長い髪が少し邪魔だったが、疲れていたのでどうでもいい。

足が二本のままだと思うように進めないので、足だけ蛸に戻してみるが、俺としては上司と同じような姿を取るのは、なんだかおそれ多い気がしてあまり好きじゃなかった。
でも、人の形をして人間たちの前に出たときに、みんながみんな俺たちにカメラを向けて写真を撮った。
今ここに残そうと残そうと、必死に俺たちに声を掛けていた。
ちっぽけな、魔女の手下だったちっぽけな俺に、人間は魅せられていた。

俺はそれで少しだけ優越感を得た。気持ちいい。
人の形をした俺を、俺は気に入った。

海の中をたゆたいながら、俺は静かに笑った。

やがて海底に、横たわる。まるで絹のシーツの上に寝転んだようだ。

絹のシーツなんか触ったことねえけど。
「はぁー、疲れた」

ひとりごちて、側の岩に寄りかかる。
さて、上司の元まであともう少しというところだ。

さあもう一泳ぎ、と俺がすいっと浮いたところを。

急に複数の小さな泡が包んで、あっという間に網が俺を閉じ込めた。



網は、俺をいとも簡単に捕らえて、しかし変にゆっくりと上へ上へと登っていった。

俺がどんなに暴れてもその網はとても丈夫で、うんともすんとも言わない。

そもそも俺はへとへとだ、抵抗しているがそこまで大暴れしてはいない。

「コラッ!?誰だ!なにしやがる!?ああ!?」

喚いてみるが、上の方で網を掴んで泳いでいるその影は―影のように真っ暗な姿だ―何も言わない。
小さな泡がぶくぶくと、俺と一緒に海面を目指すばかりだ。

「なんだこりゃ…」
目を凝らして、影の姿をよく見る。
二本の足にヒレがついている。
二本の手にヒレがついている。
背中に丸くて細長いものを抱えていて、そこから何本か触手が伸びている。

「テメエ、俺がどこの誰か知っててやってんのか!?」
我ながらチンピラのようなことを言っていた。

あまりにも俺が喚くので、影は流石に気になったのかこちらに顔を向けた。

その顔はやはり真っ黒で、そして赤くて大きな目があって、口はごつごつとした貝のようなもので覆われていた。
初めて見る生き物だった。
しかも喋らない。

「なんか言いやがれってんだコラ!」
「………」
しかし無言だ。
はあ?コミュニケーションくらい取ろうぜ?
俺は混乱しているのか、そんなどうでもいいことを考えてしまった。

明らかに、俺は拉致されている。
捕食のため?
いいや、そんな生き物には見えない。
いや…俺が知らないだけで、そういう生き物なのかもしれない。

やがて、海面が近づくと、影は右手で俺に何かを向けた。
銀色の、細長いもの。

胸の部分に、ちくりとした痛みを感じたと思ったら、俺はまるで再び海の底に沈んでいくように落ちていってしまった。
眠りの中へ。





エイトフットのジョー。
海の魔女アースラの手下。
Dランドで働くキャスト。

私は仕事のついでに寄ったDランドで、彼を見かけた。
ワーオワオワーオ!
光る銀の髪は、まるで水へ飛び込み沈んだように上へ毛先が流れ、うねっていた。紫のメッシュが入っている。
セクシーだ。

気だるげな目。死んだような顔色。
サイコーに色っぽい。
くねくね、ぐたぐたとした、動き。
嗚呼、シックだ…耽美だ…。

蛸であるらしい彼は、でも人間の形をしていて、歌って踊って人間を楽しませていた。

ついこの間、失恋した私には、とても刺激の強いものだった。

あ!そうだ、仕事も一段落している。
資産も有り余っている。
前回の恋人の時はあまりお金が掛からなかった。
ジョーを恋人にするには、充分すぎる。

充分すぎる余裕がある。やったね。
そう思った。
思い立ったら、すぐに行動に移った。


まず計画を立てる。

Dランドのセキュリティは強い。
武器はもちろん捕獲器など、到底持ち込めやしない。
じゃあ彼が、彼らがD世界に帰るときを狙うしかないなぁ。
そんな風にひとりで色々考える。


D世界と人間世界は、Dランドによって繋がっている。
D世界の住人のみが、人間世界とD世界を行き来出来る。

しかし人間世界には、いくつかの抜け道があり、異世界に繋がる扉がいくつか把握されている。
知らずに人間がそこを通って、D世界にたどり着いてしまったという例がある。
私が関わっている仕事でも、そのような抜け道を利用してビジネスを展開していたりするのだから、もはや私にはジョーを追いかけて行くことさえ可能だった。
自信があった。

私には出来る。
抜け道も知っている。
彼を捕まえることも出来る。

私には、簡単だった。







アースラの住んでいる海の場所を知っていたので、先に待ち伏せすることにした。

ダイビングスーツとそれなりの装備で身を固めて、しばらく砂浜でシートを被って身を隠す。
辺りは人気が無いので、少し目立っても大丈夫だった。
それに、D世界の住人は、砂浜にシートが落ちていても気にならない。
頭の中はいつも幸せでハッピーで、楽しいことでいっぱいなのだから。いいねいいね。羨ましいね!

まあでも、私も今は脳内はパーティさ。



四日。
四日間、私はそこに隠れていた。
なんだ、ハロウィン終わってすぐ帰宅ってわけじゃあないのか。ちょっと計画は狂っていた。
でも問題はない。

計画通り、ジョーが現れた。

DランドからD世界へ移動する時は、ある扉を使う。使う者の好きな場所に行ける特殊な扉が存在するのだ。便利ー。
いいなぁ、私もDランドの人間枠で働けばよかったかなと一瞬思ったが、それでは身元が―顔がバレてしまう―ので却下だ。


ジョーは、魔力が限界なのかふらふらしていた。
もうここで捕まえてしまおうかなぁ。

でもダイビングの資格も取って、スーツも着てしっかり装備したのに、このまま砂浜で捕獲するってのも勿体無い気がする。
せっかくなのだから、海の中で物捕り物をしたい。

あ、者捕り物かな?どっちでもいいけど。

よーし潜ろう、潜っちゃおう。
うんうん、とひとりで頷いているとジョーはすでに海に足を着けていた。

シートから匍匐前進で這い出し、私も後を追う。

ジョーから距離を取りながら、追い掛ける。
どぷん、とジョーが海に消えた。

私も離れた場所で、水中に潜る。

ゆらゆら、ゆらゆらと。
まるでジョーは死んでいるかのように沈んでいった。

それがあまりにも、あまりにもあまりにもあまりにもあまりにもあまりにも!あまりにも!!!

美しくて、私は脳をフル回転させてしまう。
自然と息が荒くなって、ボンベの酸素を無駄に消費してしまう。

ああ、目に悪い。目に悪いし酸素も無くなってしまう。

私はあえてジョーから視線を反らし、薄目で彼を追うことにした。


海底につくと、ジョーは一休みのためか岩場にその体を横たわらせた。
人間のままの上半身と、スーツに仕立ててあったものと同じ色の蛸の足。
半魚人のようなジョーは、とても素敵だった。
蛸の姿でも、人間の姿でも大変可愛らしいのに、それが半分ずつ存在しているだなんてオージーザス!神はなんと残酷なのだろう!

神は信じていないけれど。
それでもオーマイガーやジーザスは多用するさ。


ジョーはぼうっと海を見つめている。
今がチャンス。
私は一気に距離を詰めた。
特別に作らせたジョーの捕獲用の網を、ジョーに向かって投げつける。

疲弊していたジョーはすぐに捕まった。イエーイ!

私は嬉しくて嬉しくて、ジョーのことを考えずに思いっきり網を引っ張り上げて、海面を目指した。
本当は網に引っ掛かって怪我してないかとか紳士的に確かめるつもりだった。マジで。

でも今は、余計なことは考えられない。
酸素がさっきの煩悩のせいで、予定の倍は使ってしまっている。

予備のボンベはあるけれど、付け替えたりする無駄な行動を取りたくない。
早く、早く早く早く早く!早くジョーを連れて帰りたい!!

私は急いでいた。

だから下の方で、網の中でジョーが暴れていても喚いていても気付かなかった。

あと30メートルで海面、というところで彼が気になった。

見てみると、彼は怒りの形相で私を睨み、その口から泡をぶくぶくと出していた。
泡を吹いているわけではなく、何かを喋っているようだった。
ふざけんな、とか、コラとか言っていたが、こっちは早く連れ帰りたくてたまらなかったので、静かにしてもらおうと思った。
砂浜で騒がれては困る。

流石にD世界の住人でも、人拐いは見逃さない。

持ってきていた特殊な麻酔銃で、彼を撃つ。
彼のその白い胸に、小さな針が刺さった。

そして彼は、まるでそのまま死んでしまうかのように、目を瞑った。



心地よい浮遊感。
ぼんやりと目覚める。
しかし、いつもとは違う。

ここは、Dランドのキャストの社員寮の部屋でもなく、見慣れないただっ広い水の中だ。
そこで、俺は目覚めた。

未だぼーっとする。
脳が動いていない。

半ば夢の途中の感覚で、辺りを見回す。

水の中はござっぱりしていた。俺以外に生き物が見当たらない。

遠目に浮いてるあれは、イカダか?
何枚ものイカダが、蔦でブイと結びつけられて浮かんでいる。

そしてそのイカダの上には、なにか置いてあった。

ぼやけてよく見えない。

ふわふわと水中で、ゆっくり回転しながら水中を眺める。

水底には、白い砂。そして岩が申し訳程度にちらほら。

アースラ、―上司の支配する海域じゃあない。
だが、水の塩度は馴染みの海と同じくらい?いや、俺が好きな濃さの塩度だ。
まあ、とにかくここは俺の住む海域じゃない。

一体、誰のねぐらに連れてこられてしまったのだろう。
俺は考え事をしているうちに、頭がはっきりとしてきて冷静に推理する余裕が出てきた。

体も、少しは自由に動く。
なんだか力はまだ入らないが、それでも動き回れるし全然オッケーだ。

視界に入っていたイカダ島を目指す。

おそるおそる水面に顔を出して、イカダ島を観察する。

そこまで古くないイカダ。最近組まれたものだろう。
しかし藻や海草が不自然に施してあるので、もしかしたらわざとそういう趣向を凝らしているのかもしれない。

何の気配も感じないので、イカダ島にあがってみる。

そこには、イカダと同じ木材で組まれたテーブルと大きめの椅子が置いてあった。そして寝床も。

テーブルの上には何も置いてなくて、誰の海域なのかさっぱり証拠が掴めない。
寝床も、Dランドの社員寮で見た人間が使うようなものだったので、もしかしたら俺と似たような奴なのかもしれない。

捕まったとき、見えていたものを整理してみる。
二本の脚と、二本の腕。そしてヒレ。背中から伸びて口元の貝殻?に繋がる触手。
半魚人?
人魚ではなかった。

じゃあやっぱり同類なのかもしれない。
だとしたら、俺を捕まえた理由は?

…上司は悪どい商売をしているので、恨まれている。
もちろんその仕事を手伝う俺も。

しかし、捕まえた俺をこの海域に放っておいて拘束もしていない。

俺はますます分からなくなった。

もう少しこの辺りを、泳いで回るか。



イカダ島から、ぬるりと降りて、再び水中に潜る。

そういえば今気づいたが、俺は上半身人間、下半身蛸のままだった。
ま、人間の体にも慣れているし。
泳ぐ分にも脚さえこのままなら平気だし。
別に気にしなかった。

それに、帰宅してた時―捕まる前ーまでのあの気だるさが感じられなくなっていた。
もしかしたら、場がいいのかもしれない。

人間がいう、パワースポットというようなもので、俺たちにも自分の魔力に良い影響を与えるスポットがある。
と、いうことは。

やはりこの場、海域を支配している俺を捕まえたであろう者は、俺に似た、または同類の種族なのかもしれない。

このまま魔力の完全回復を待って、一気に逃走することも可能なきがしてきた。

天気も良いし、風もそこまで強くない。
波も荒れないだろう。

…波?


俺はもう一度、急いで水面に顔を出した。

静かに、息を潜めて波を感じることだけに集中する。



やがて水面は、俺の鼓動と、呼吸する胸の上下に反応して、少しだけ波紋を立てた。

「……やっべぇ、ここ。海じゃねえ」

頭に、ガーンという衝撃が走った。



太陽はよく見たら、でっかい熱電球。
空はよく見たら、雲が動いていない。
風は、無臭。

水面から上半身を出して、風の吹く方へと、探りながら泳いでいく。

ごおおお、という音が、どこか上の方から聞こえてくる。

偽物の空、偽物の風。そしてここは偽物の海。

しかしあたりを見回しても、ずーっとずーっと偽物の海は続いている。

「はぁ?んだよこれ…どういうことだよ…」

もしかして結界の中とか?
異空間に閉じ込められてるとか?

俺がそこらじゅうをぐるぐると泳ぎ回っていると、到底海では聞こえないような音が聞こえたものだから、俺はハッとして音の方を見た。

ガチャっという音がした。

それはまさしく、ドアが開く音だ。


ドアが開いたと思われる方向を見てみる。

目を凝らすと、そこには人影があった。
俺は急いでそこ目掛けて潜っていく。

人影は俺に気付いていないのか、手元のものに気を取られているのか、全くこちらを見なかった。

真っ白な砂浜と同じ色した大きな尾ひれをなびかせながら、人影―女はこちらに向かって来ていた。

「テメェか!俺をここに連れてき」

俺は思いっきり殴りかかるつもりで拳を振り上げたし、拳が当たらなくても体当たりするくらいの勢いで泳いでいたから

顔の前の見えない壁に気付かず、思いっきりそこにぶつかってしまった。

ごいん、というめちゃくちゃ痛そうな音が響いた。

実際、めっちゃ痛かった。

生理的な涙も出てきたし、強打した鼻からは血も出た。
「イッッッッテェエエエエーーーー!?ふざっけんな!なんだ!?」

俺はぶつかった壁を叩いた。
感触からしてものすごく分厚い。
それなのに、そこには何も見えない。視覚で捉えることが出来ない。

俺がパントマイムのように、ぺたぺたと見えない壁を触っているとさっきの女がやっとこちらに気付いたようで声を上げた。

「ワーオ!何してるのジョー!」

女は、持っていた本や機械を砂浜に落として、そして半笑いしながらこちらにやって来た。

尾ひれと思っていたものは、ただの裾の長いワンピースと白衣だった。
女には、脚が二本きちんと生えていた。
裸足だ。

「あ、拾わなきゃ」
女は独り言を言いながら引き返して、荷物を拾った。
その手には水掻きがついていない。

女は、人間だった。

俺はさっきの強打した箇所の痛みも忘れ、女の行動を見詰めていた。
見詰めることしかできなかった。
さっぱり訳が分からないからだ。

女は俺と同じように水中にいるもんだと思っていたが、よくよく見てみれば女の髪は、浮力を持っていない。

髪も服も、重力に従って動いている。

見えない壁の向こうは、全く同じ景色なのに水の中では無いようだった。

その証拠に、女は見えない壁の近くで、扉を開けるような仕草をした。なかなかに重量のある扉らしく、閉めるときに力を込めていた。
そしてスタスタと歩いて、しばらく行ったところでまた扉を開ける仕草をした。同じような扉らしく、やはり重量感のあるものを動かす動きをした。

俺は、ぼーっとそれを眺めていたが、見えない壁にぶつからないようにおそるおそる女に近づいていった。
女が歩く真上の位置にたどり着いた。

「あっ待って!そこも危ないよ」

俺が近づいてくるのが見えたのか、女は言った。

びくりと俺は止まり、手を前に差し伸ばして壁の有無を確かめる。

壁、ではなくドーム状の見えないガラスがあった。

「ねえ、危ないからさーイカダのところで待っててくれないかな?ジョー」
「…ああ?」
「さあ、行って」

女はにこりと笑った。
なんだか俺はその笑顔に凍りつくものを感じて、逆らうのを止めた。
上司の、アースラのする悪い笑顔に雰囲気が似ていた。

俺は見えない壁と見えないドーム状のガラスから距離を充分に取り、言われたイカダ島を目指した。

女は、やはり俺には見えない透明な場所をすたすたと歩いていた。
やがて階段があったのか、昇っていく。
見えないのは女も同じはずなのに、何故かすたすたと歩みを変えずに進むものだから、俺は少し不思議に思った。

というかさっきからイレギュラーなことが起きすぎていて、俺はすっかり『怒る』ということを忘れていた。

階段を昇りきると、イカダ島と同じ高さに女は立っていた。

「ジョー、椅子に座ってくれない?」
「椅子?」

女はイカダ島の上に乗っていた椅子を指していた。

俺はしぶしぶそれに従う。

なかなか凝った造りのその椅子に深く腰を掛けると、どこかでピーっという電子音がした。

そして女が、見えない扉を開けた。



私は、怪訝そうなジョーの視線を受けながら足元のブイを掬い上げた。
片手でそのまま、ブイとイカダを繋いでいる蔦…の下に隠れていた太めの縄の梯子を水面に出す。
扉の側にあるフックにそれを掛けてピンと張れば、水面に簡易橋の出来上がりだ。

それを見てジョーが椅子から立ち上がる。
私は大きな声で叫んだ。

「ちょっと!動いたらバランスが崩れる!」

素直なジョーはその一言で、ピタリと動きを止める。
グッボーイ、グッボーイ。

私はにっこりと笑った。

縄梯子に乗ると、ジョーは分かりやすく顔を青ざめた。
ぎしぎしと音を立てて、揺れる縄梯子。
でも私のバランス感覚は誇るべき才能なので心配はご無用。

「よ、ほ、っと、やっと、ほっ」

コツさえ掴めば、走って渡れるくらいだ。
泳いで渡ってもいいのだけど、生憎まだ水着を購入していなかった。

「さ、ではご挨拶をさせてもらうわねジョー」
濡れてしまったワンピースの裾を絞って、私はぺこりとおじぎをした。

「ご挨拶って、それよりもこの」
「あたしはモルガン。モルガン・カーン」
「…ジョー、エイトフットのジョーだ。っじゃねえよ!自己紹介し合う時間じゃねえだろ?俺は、帰ってる途中〜?急に〜?連・れ・去・ら・れ・た・の!」

ジョーは、私に向かって何度もリズミカルに人差し指で差した。

「まあそれは大変だったねー、でも怪我してないし大丈夫じゃない?どれどれ」

私はジョーの首筋を触って、脈拍を計る。
しかしジョーは咄嗟にその手を払う。
手首を掴んで同じく脈を計ると、興奮しているが別段異常は無いようだ。
「なにしやがるッ!」
「触診?」
「しょく…ッ、医者じゃねだろテメェ!」

ジョーはひどく興奮していて、捕獲したときに麻酔銃で撃った傷跡が、虫刺されのように赤くなっていた。

「あー、跡になっちゃったか。あとでお薬塗ろうね」
「ッこれ、あの時の…」

ジョーは忘れていた怒りを取り戻したらしい。

怒りの感情に、蛸の脚が反応して小刻みにうねうねと震えている。

「まあまあ、落ち着いてジョー。あたしはきちんとした理由があって君を連れてきたの」
「理由だと?俺を拉致監禁した理由か?はっ!そりゃさぞかし真っ当な理由があるんだろうなあ!」

ジョーは、眉をこれでもかというくらい寄せて、口の端をこれでもかってくらい下げた。
その歪んだ表情が素敵だ。
素敵だ素敵だ素敵だ、素敵だ!!!

「オイ、聞いてんのかよテメェ」

私はハッとする。いけないいけない、どうも自分の世界に浸ってしまう。

「それでね、理由なんだけど。えっと…ほら、あの魔女―アースラさんとこはブラック企業だからね、助けましたー!」
「ふざけんな、確かにブラックだがそれなら無理矢理拉致する必要がねえだろ」
「たしかに」

私はうんうんと頷いた。
それにジョーがまたブチキレる。
「テメェ真面目にやれよ?真面目に。俺のこの怒り心頭なのをスーッと納得できるような理由があるってテメェが言ってんだからよ?」

「あーホラ、あたしはアースラの手下で、ジョーが人間界で見てきたことやって来たことその他もろもろを報告してもらうためのエージェント…」
「テメェさっき自分でアースラ様のことボロクソ言ってたじゃねえか。一転二転してんじゃねえぞアア!?」
「んーとんーと、じゃあ君を捕獲して、研究するためー!」

私が白衣をはためかせてその場で廻る。

ジョーは、ぽかーんとしていた。

「…これもダメか」
「…ダメって、じゃあマジで何なんだよ!何で俺をここに閉じ込める!?」

ジョーは呆れ帰った後、やはり怒りだして声を荒げた。

「本当の理由?本当の理由を言ってしまうと、それはあたしが君を愛しているため」

私が笑うと、やはりジョーはポカーンとした。

嗚呼、その顔も可愛い。




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