朝を連れてくる悪魔2


HELLSING好きに30のお題【切ない…】


目覚めると同時に消える残像。

私はゆっくりと覚醒した。
夢の最後で、彼女が私に声を掛ける。「おはよう」と。
いつの頃だったか、幼い私は幻想を見た。

夜が嫌いで仕方なかった私は、どうにか突破口を見つけたかったのだろう。

幻想は、「朝を連れてきてあげる」と言った。
それから私は同じような目覚めを繰り返している。

夢は見ない方だ。
だが、必ず目覚める前は幻想が私を起こす。

朝日が差し込むカーテンの側、私のベットの側、私の椅子に座って、

「おはようヴラド」

と囁く。

近くに居れば、遠いときもある。
手が届きそうなときは、ベットから手を伸ばした状態で目がさめる時がある。


それは女なのだが、どこか男らしさも醸し出ていて。
私は酷くもどかしい気持ちになる。
青年期も過ぎるころには、何度も何度も、もやもやとした気持ちに悩まされた。

彼女は誰なのだろうか。

私が創り出した幻想?
果たして本当にそうなのか?
果たして、あれは存在しないものなのだろうか。


「どういたしました、ヴラド」
女が私に声を掛ける。
私を世話してくれた男の、妹。
私の婚約者。
「ああ、いや。考え事だ」

私は少し笑って答えた。
女は、艶やかな髪をしている。女はくりくりとした瞳をしている。
女の体はふくよかで、女の心は酷く優しい。

「あまり考えすぎないことですわ」

女は私の思考と的外れなことを言った。
「そうだな」

しかし私はそれに合わせるように答えてやる。



この女との結婚を条件に、私は解放される。
解放が目当てなわけではない。女も好きだ。

愛?
いや、違う。

燃え上がる感情。湧き上がる欲求。

それが伴わない、この感情。それは愛と関係はなかろうと思う。

ならば何故、私は“自由”を求めている?



「ヴラド、私の愛しい夫」

女が私に接吻をする。

違う


私が求めているのは、これじゃあない。
幼さが残る女は、私の心を揺さぶらない。

良く言えば純粋である。

悪く言えば、乳臭いのだ。

嗚呼、もどかしい。この気持ちは何だ。
求めているものは、何なのだ。


私はやがて戦場へ赴く。
女はそれを寂しがって泣いているのだ。
女は寂しくて私を求める。

私?



私は、朝を連れてくる悪魔を求めている。

闇の中から私を救い出した、闇の者。
名前は、わからない。
あの女が欲しい。
胸が苦しい。

この気持ちは、何というのだろう。


END



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