アタシは猫


あたしは猫。きまぐれな猫。自由な猫。真っ赤な猫。
珍しいでショ。真っ赤な血の色よ。
猫って自由ね。ドコへ行ったってかまいやしない。
だからあたしはいろんなところへ行った。
誰かが「子猫ちゃん」って撫でてくれれば、そのヒトの所に行くし。
誰かが美味しいごはんをくれるなら、そのヒトの所に居るし。
誰かがあったかいミルクをくれれば、そのヒトの隣で寝る。
都合いいワね、猫って。

でも、猫の脳みそって小さいから。
いちいち飼い主(飼い主って呼べるのかしら)の顔なんて覚えきれない。
なんだっけ。なんだったっけ?
あのヒトの匂いって何だったっけ?
「グレル」
あ、あのヒトが呼んでる。あたしが居なくなったら探す。名前を呼ぶ。勝手に付けた、あたしの名前。ごはんだよ、って呼ぶ。
「最近暖かくなってきたね」
このヒトは不思議な匂いがする。だから他のヒトの匂いなんて忘れた。
このヒトは、哀しい匂いがする。
抱き上げられて、眠たくなっちゃった。
おうちに着いたら、起こしてネ


ラクシャーサ。


「何か言ったかいグレル」
「んあ?…ぅわお!?」
アタシはいきなり話しかけられて、ソファーから転げ落ちた。
「い…ったあ!!んもう何ヨ!!」
「何してるんだい、もう」
恋人のラクシャーサが、笑いながら言った。夕刊を読んでいる。
「アンタが急に話しかけるからでショ!?」
「寝ぼけてたらしいね」
「寝てたわヨ、夢の中だったわヨ!!」
「怒らないでくれよ」
アタシが歯をむき出しにして怒ると、ラクシャーサはこっちへ来た。
ソファーに座る。
アタシもラクシャーサに膝枕してもらった。
「…何か言ってたね、寝言を」
「ん?そうなの?アタシはわからないワ」
寝言か何か言っていたのだろうか。
ラクシャーサは、優しく髪を撫でてくれる。
「どんな夢を見ていたんだい?」
「…ん〜?えっとねぇ……どんな夢だったかしら」
アタシは、笑いながら目を瞑った。
本当に夢の内容は忘れてしまった。
でも、このヒトからは哀しい匂いがした。
「確かね。いい夢だったワ」




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