無礼講BREAK!


「阿草さんと組頭って、一体どういう馴れ初めで付き合ってらっさるんれすかぁ?」


後半呂律が回っていないことから、諸泉がだいぶ酔っているのがわかる。

「こ、こら!組頭と阿草さんに向かって何を言う」

「あ〜いいよいいよ、無礼講無礼講」

「そうです、何も無礼ではありませぬ。馴れ初めくらい晒しますよ」


阿草は猪口をぐいと上げた。その白い喉元が灯りに照らされる。


おっと…今ならその首にクナイを突きつけて……いやいやその首に口吸いして―、と雑渡が目を奪われていると諸泉が続けた。

「じゃあぜひ教えてくらさいよ〜阿草さん」

「いいですとも、別に聞いても面白くない話ですし」

「ひどいなぁ阿草は。私との馴れ初めをそんな風に思っていたなんて…ん?」

「ついでに皆さんも拝聴下さいまし。貴殿方の上司はそれはもう非道な輩ということが再認識できましょうから」

「ちょっと待って阿草…言っちゃうの?」



雑渡は阿草の両肩を掴む。しかし阿草はさらりとした顔で言う。

「いやですか?私視線の貴方との馴れ初めを聞くのは」

「いやいいけど」

組頭、即答ですか…!



阿草の口からそういった話を聞けるのはなんだか嬉しい部下たちだったが、上司の変態ぶり(?)に落胆せざるを得なかった。





「まだ諸泉君が…こいつ―雑渡の配下になってない時期ですね。私はタソガレドキ城の戦にて巻き添えを食らい、タソガレドキの領内でくたばる準備をしておったのですよ。

なんせ痺れ薬の塗られた矢が数本と刀傷。
さすがの私も助からんと諦めておりました。するとそこに、忍が現れたのです。何を隠そう雑渡でありますよ。

私はタソガレドキの忍だが貴方はどこの城の者かと、問われました。
素直に答えました、雇われ忍のような仕事で食いついでおりますと。
そしてそろそろ食いつぐ必要もなくなりますと。

痺れ薬も効いてまいりまして、私はそれから眠りました。
そして目を覚ますと、そこはまるで城の牢…否―、拷問室のようなところでに私はおりました。

先ほどの忍…雑渡はニコニコしながら私の両手首を柱にくくりつけ縛るのです。
痺れは解けただろう、と問われました。
雑渡は、私をどこかのスパイではないかと思い捕らえたのであります。あまつさえ、拷問して全て吐かせようとしたのです。……まぁ皆様、過ぎたことなのでお気になさらず。そのように雑渡を軽蔑するような目でみてあげないでくださいませ。

拷問で雑渡は私の経歴を全て吐かせました。

そりゃもう他人には言えないような恥ずかしいことをね。

………組頭、そこで頬を染めるのは間違っております。

拷問を受けて、まぁ疑いは晴れたわけですがあれは絶対に解っていて拷問しましたよこのクソ包帯男。……おっと口が滑った(棒読み)

ついでにそれから数ヶ月、雑渡の元で研修を受け力を認められた私はこうして組頭の補佐のような仕事に就かせていただいておるのです」


「…やめてよみんな……そんな目で見ないでよ」

雑渡はたじろいだ。

「ちょっと待ってくらさいよう…でもこの話って阿草さんがどういう経緯でタソガレドキの忍になったかってゆう話じゃないれすか」

「…………確かにそうだ。諸泉君、酔っているのにしっかりしていますね」


阿草は感心してみせる。
「そうだよ阿草〜肝心なところを話していないじゃんかー」

雑渡はニヘニヘと笑いながら言う。

「拷問の時、阿草はちゃ〜んと“雑渡さんと一緒にいたいから”って言ったじゃない」


ザワッ……


一同はざわついた。
あの、最強の冷徹女子(クールビューティ)が


雑渡に向かってそんなデレた台詞を…!?



「はて、言いましたかなそんなこと」

「ちょ、覚えてないとか無しだからね?大事なことだよ?」

「さぁ、この駄目上司の駄目さも再認識しましたしそろそろ宴も閉めましょうか」

「あっちょ、みんな!ホントなんだからね!ほ、ホントなんだから!!」



詳しい話は、また次の機会に…





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