目を覚ますと、隣で全裸のまま布団にくるまる細い少女がおはようと呟いた。なぜこの少女がここにいるのか分からず、少女の赤い瞳を見つめながら頭を悩ます。そして適当に脱ぎ散らかされた女物の下着やら洋服が落ちていることを確認すると、また勢いのままやってしまったのかと自己嫌悪する。あまり寝てないせいかぐるぐると揺れる頭を押さえながら、上半身だけをゆっくりと起きあがらせた。

「……百合子さんは、どうして自分と寝てくれるんですか?」
「あァ? 気持ちいいからに決まってンだろ」
「それは、女の子としてどうかと……」
「なに紳士ぶってンだよ。お前だって気持ちいい、俺も気持ちいい。幸せ万歳だろォが」

でも、といいかけてやめた。彼女だけじゃない。自分だって、彼女の体を獣のように欲求を満たし、求めているのだから。

「一体いつからこうなったんでしょうか」
「ンー。お前が振られたとか言って酔いつぶれたときからだろ」
「……詳しい説明ありがとうございます」

深い嘆息が再び喉から漏れる。一度身体を重ねてから、ここまでずるずると引きずってきた。言っておくが、自分にだって命をかけても守りたい大切な人がいる。それは彼女にしたってそうだ。でも、この想いは報われないで、ただただ、傷つくだけ。そう愚痴を言い合いながら酒を交わした夜に、二人は選択肢を間違えた。たったそれだけの話。よくある話だ。酒の飲みすぎは理性の全てを欠かすことは常識である。この真っ白な女の子は嫌いではない。美人だと思うし、何よりサバサバとした性格が魅力的だ(御坂さんが一番だけど)。それでも彼女に恋愛感情を持てないのは、仕事仲間だからか割り切ってしまっているからか。

「なァ、」

彼女の狂気めいた赤い瞳が覗き込んだ。自分は内心慌てながら、表面にはにこりと笑顔を絶やさず、

「なんですか」
「物足りねェ」
「……つまり、もう一回ヤろうと?」
「一回って言わずによォ。何回でもイケるぜ」
「今日は絶好調ですね百合子さん」

いつもはすぐ疲れて寝てしまうのに。付け加えるように言うと、彼女の眉が小さく動いた。

「いいから抱け」
「はいはい」

少女の細い腕が首に絡まる。自分はそっと彼女の脇の間へ手を入れて抱きしめると、そのまま首筋を吸った。彼女の身体がたじろぎ、あっ、と小さな声を漏らした。そのまま手は勝手に彼女の腹部を這いだした。汗ばんだ皮膚は少しべとついていて、百合子の甘い体臭が鼻孔をくすぐった。百合子は口を噤んだまま声を押し殺す。

「声出してもいいんですよ?」
「っ、うっせェ……黙れ」
「強がりですねぇ」

そこがまた可愛いんですけど。微笑みを絶やさず、彼女の薄い唇に唇を押し当てた。無理やり隙間に舌を侵入させ口内を犯していく。逃げないように頭を押さえつけ、呼吸を奪うかのように吸いつく。貪るように、食らいつくように。


/本当に正しい答えが出るのは数学だけ