啄むようなキスに、ぶるりと体を震わせる。それに気づいたのか、白い少女はニヤリと妖しく微笑み、今度は深く唇を押し付け、唇の隙間に無理やり舌を乱入させた。

「ふぁ…や…」

ぞくり、と不思議な感覚が脳みそを刺激し、バチバチと微かに電気が放たれる。制御することなど簡単なのだが、今はそんな単純な演算もできないくらいに、美琴の脳は麻痺している。にゅるり、とした感触に甘い息を漏らす。舌は上下の歯列を優しくなぞっていき、それが終われば今度は歯の隙間に入っていく。粘膜を小さな舌の先でつつかれば、口元はだらしなく唾液が零れた。それでも止まらない激しさに、目印に涙を浮かべながら、体温が上昇していくのを感じる。ピチャピチャと生々しく聞こえる水音が、羞恥心を煽る。だけれども、その羞恥は快楽と変化していく。もっと、感じたい。そう思うようになれば、無意識に逃げ回っていた舌を、今度はたどたどしく絡めていく。百合子もその美琴の初々しい反応が、何だかとても可愛くて、吸い付くように絡めた。

「ん…ゃ……」

数分がたち、唇と唇が離れ、銀色の糸が名残惜しむように繋がる。それを惜しげに見つめていると、

「ンだァ? その興奮しきった顔はよォ」
紅い瞳が、美琴の顔に迫る。三日月のように口元が歪み、白く透き通った綺麗な肌がやけに艶やかに見えた。美琴は必死に酸素をとりこみながら、ぼぅと曖昧に残された快楽に浸る。

「美琴ちゃンは、変態なのかなァ?」
「あ、」

百合子は、美琴の体をポンと押すと、そのままふらりと仰向けにベッドに倒れこむ。馬乗りになった百合子は、そのまま顔を美琴の細い首筋に近づけ、甘噛みをしていく。何度も、何度も、喉に、脈に、鎖骨に、赤い印をつける。吸い付きは、離して、噛んでは、舐めて、息を吹きかける。

「あは、やだ、ん、くすぐった……」
「ンー? もっと激しいのが欲しいンですかァ?」

挑発的な台詞だった。それでも美琴は、理解しながらもその挑発にのる。

「ほしい……です」

その言葉に百合子は、美琴に小鳥のような小さなキスを落とすと、「よくできましたァ」と言いながら、制服のYシャツをまくる。外気に晒された肌を、まるで壊れものを扱うように、サラリと撫でられる。百合子の手のひらが思ったより、ひんやりと冷たくて体がぴくりと跳ねた。後輩に見られたらどうしようか。美琴の脳裏にうつる変態な後輩は、発狂してしまうのだろうか。それとも喜々と舞い踊るのだろうか。どうでもいいことなのに、それがなんだか面白くて、くすりと笑った。


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