つまらない恋をしていますね、反吐が出ます。誰かが可哀想な物を見る目で一蹴した言葉は脳味噌に焼き付いてしまったらしく、何度も頭の中をあっちへこっちへと反復した。気の長い方でない普段の私なら間違いなく憤慨していたかもしれない。しかし否定することも肯定することも出来ないのは確かであった。この恋が下らない形であることくらい分かっている。彼も私もそんなに馬鹿じゃない。私たちの矛盾を孕んだ恋は純粋ではなかったし、例えてしまうなら都会の海のように底が見えないほど濁ってしまっている。互いの寂しさだけが引き積められた唇を貪り、仄かな苦い味に顔をしかめながらようやく私たちは恋をしていたんだと気がつく。ずっと小さかった頃に憧れた少女漫画のような綺麗な恋とはほど遠かった。それでもいい。そうでなきゃいけない。彼は私を掻き抱いたあとにそう言った。どうして、だなんて野暮なことは繰り返さない。ただ私は酷く火照った心臓を落ち着かせるためにうんと素っ気なく返すだけ。好きも嫌いも必要ない。私たちは確かに恋人同士で、一般常識から踏みはずれていると罵られても何度も肌と肌を重ね合い、温もりを求め合う。泣いてしまわぬよう、逃げてしまわぬよう、私たちはこれからも空洞になった胸を快楽で満たしていく。
瞼で赤を隠してぐっすりと意識を閉ざす一方通行の雪のような肌をするりと撫でた。ひんやりと氷のような体温が、酷く愛しく感じ、私は彼の首筋に小鳥同士の戯れのようなキスを落とした。すると一方通行は思い瞼をゆっくりと上げて赤に私を映すと、薄い手のひらが頭にのっかって、ぐちゃぐちゃにしたから、私も真っ白な髪の毛をぐりぐりしてあげた。嫌そうに歪んだ彼の顔が可笑しくて私はへらりと笑った。

「なに笑ってンだよ」
「あなたが可愛いからよ」
「…意味分かンねェ」

ねぇ、私たちってみんながいうほど酷い恋なんてしてないわ。


/きっと最後の恋だから


一周年企画