「素敵じゃないですか、空を飛べるって。全然、おかしくないです」

そのあっさりとした言葉に垣根の目蓋がぱちりと開閉し、お花畑で飾られた少女は垣根の珍しくキョトンとした不思議そうな表情に笑顔がふわりと零れた。

「だって、私の夢も似たようなものですし」
「夢?」
「大空にお花を咲かせたいんです」
「は?」
「青と白だけけど、素っ気ない感じなので、一面をカラフルにしてみたいんです」
「え、そりゃなんだか目に悪そうな夢だな」
「でも、素敵でしょ?」

素敵、すてき。垣根は、一面がお花畑の大空を想像した。例えば、雨は赤青黄紫の花びらがコンクリートを塗り、雪はカラフルに積もる。虹は無数の可愛い花弁で、風と一緒に花びらが世界中をくるりくるり踊り続ける。あまりにもシュールな世界に垣根はくつくつと笑みを零した。

「ああ…飾利らしいな」
「はい!」
「なら俺は空一面の花畑まで飾利を運んでいくのが夢だな」

なんとメルヘン。どこの童話を語っているのだこの男は。
しかし、初春は垣根を馬鹿にせず、罵りもせず、満面の笑顔を満開の花びらのように咲かせた。


/ハローハロー、僕たちの愛には口出し無用です