美琴は間近まで一方通行の赤い瞳を見つめ、最後の瞬間にようやく静かに瞼を閉じた。鼻が触れ、互いの息がかかり、唇の薄っぺらい皮膚がそっと押し付けられる。離して、くっつけて、また離して、くっつけて、子供のような遊びのような曖昧で優しげキスが繰り返され、回数を重ねていくうちに深く長く性的なものになっていく。やがて乾いていたキスが濡れたキスになり、一方通行は一度重ね合わせるのをやめたかと思えば「口開け」と美琴の耳元で息を吹きかけるように小さく囁いた。美琴は戸惑いつつも頬を真っ赤にそめて、濡れそぼった唇を恐る恐る開く。一方通行はその無防備な唇に食らいつく。舌の先が歯に触れた瞬間、美琴の肩がびくりと揺れた。それでも一方通行は止まらずに、今度は柔らかな歯茎を丁寧に、隅々までゆっくりと舌先で撫でていく。美琴はそのいじらしい愛撫に我慢できず、躊躇いがちに舌を触れ合わせた。舌と舌、互いの歯までもが同一になり時間の感覚さえ見失うほど貪っていく。生暖かい心地よさが美琴の閉じられた瞼のあいだから涙があふれ出てきた。


/あなたの呼吸が染み付いた喉はもう他のなにものも呼べない