ばっかじゃないの。唇から漏れたのはたったそれだけの罵倒。もっと何か汚い言葉を吐き出す予定をたてていたのに、心中に渦巻く悪意を掻きよせても掻きよせても、ばか、としか零れてくれない。憎くて、殺したくて、この世にはもういない一万人の妹達の同じ苦しみを与えたかったから雷撃の槍を放ったのに、どうしてこんなに後悔ばかり胸を締め付けているのだろうか。死にかけたのに、どうして私に反撃しないのか。彼が改心していたとしても、許すつもりなどさらさらないのに、私には何がなんだかちっとも分からなくて、こらえていた涙が目からあふれた。

「…っ、ばかぁ!!!」

迷子になった子供が母親と会えたときに泣いてしまうみたいな、悲しいけれど優しい涙が、ぽろぽろと頬を伝い落ちる。

「……うっせェ…、頭に響くっつーの」
「ばかばかばかばかばかばかばかぁあああっ! どうして、も、なんであんたもあいつも、馬鹿!」
「はン、学園都市も落ちぶれたもンだなァ、第一位様が馬鹿とは」
「ばか、ほんと、ばかよ、あんた。どうして、反射しないのよ! あんたならあれくらい避けれたはずたでしょーが!」

証拠に、私は完膚なきまでに第三位としての誇りを全て叩きのめされたことがある。彼は掠りもせず、ただ立っているだけで私という存在を粉々に崩し、たくさんの大切なものを奪っていった。なのに、そんな悪逆非道な彼が一体どうして抵抗もせずに電撃を食らったのか。一方通行は、戸惑いがちに眉をひそませ、「そりゃ、あれだあれ」と照れ隠しをするように一呼吸おき、

「守りてェからだよ、……クソッタレ」

口説き文句など、いくらでも知ってるし聞いている。わざとらしい甘い台詞も、いくつも受け取ってきた。なのに頬が赤くなるのを感じたのは


/なんだかなんだかんだ