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 7時30分。吹奏楽部の部室である第二音楽室に入るとすでに半数以上の部員は集まっていた。
「おはようございます」
「おはよう悠真くん。十分後には体育館でリハーサルだから急いでね」
楽器の準備をしていたクラリネットのパートリーダーの高橋先輩の言葉で僕も急いで楽器の準備を始めた。
「林君、ボタン……」
僕の制服を指さし、耳を澄ませないと聞こえないような声で話すのはもう一人のクラリネットパートの先輩である樋口先輩だった。
「あっ本当だ。ボタン上まで留まってないよ」
「到着したら留めようと思っていて忘れていました」
そう話すと樋口先輩は体育館へ向かってしまった。
「怒っているわけではないから気にしないで」
高橋先輩の言葉にわかっていますよと返事をし僕も体育館へ向かった。

 演奏する曲の確認、入学式全体を通してのリハーサルは特に問題なく進んだ。
 時間はあっという間に過ぎ、もう少しすると保護者がこの体育館に入ってくる。外からは人が話す声が聞こえてくる。
夏のコンクールほどではないが少し緊張してきた。
「15分後には保護者受付が始まるからそれまでにお手洗いなど済ませておくように」
指揮台に立っていた顧問の言葉で複数の部員が席を立った。
「入学式か、今年は何人入部してくれるだろうね」
「先輩、クラリネットパートは何人入りますかね」
「最低でも2人、できれば3人は来てほしいかな。あとできれば経験者が入部してくれたらありがたいけれど」
通っている実史(みふみ)高校の吹奏楽部は何というかほかの高校と比べるとパッとしないのだ。何か大きな特徴や強みがあるわけでもない。
同じくらいの偏差値の高校に強豪校があったり、近くにある別の高校のほうがより熱心に力を入れていたりするためこの高校で吹奏楽をやろうと思う人は多くはないのだ。
「悠真君の中学はどう? 誰か入学するとか連絡あった?」
「後輩たちと連絡先を交換していないのでわからないですね。妹の高校には何人か吹部の推薦で入った子がいると聞きました」
「推薦枠ねえ……。さすが私立は違うね」
高橋先輩はその推薦制度を皮肉っているわけではなく本当に感心しているようで、すごいなと何度もつぶやいていた。
「そうですね、それに下の代は県代表にもなったので高校で続けるとすると強いところに行ってしまうかもしれませんね」
「あー、そうだった。確か悠真くんの中学は強かったよね」
「そうですね。僕の代ではダメダメでしたけど。先輩と後輩はいい結果を残しています」

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