2 | ナノ

 ピピピッという目覚まし時計特有のけたたましい音が僕を夢の中から引きずり出した。
「夢か……」
 やけにリアルな夢だった。いや、夢のいくつかは2年前に実際にあったものだった。
けれども、あまり良い夢ではなかった。少しあの頃のことを思い出していたが、今日は早く家を出ないといけないことに気が付いた。
 時刻を見ると午前6時を少し過ぎたころ。寝坊せず予定通りに起きられたことに安堵した。

階段を降りリビングへ向かうと双子の妹はすでに朝食を食べ終えスマホをいじっていた。
「おはよー、寝坊しなくてよかったね」
「今日は遅刻できないからな」
遅刻したらみんなに迷惑をかける、と呟くと妹は当たり前じゃんと、言いたげな顔をしながら僕を見る。
「だって今日は入学式でしょう。悠真の学校は1人でも欠けたら大変じゃん」
「生徒会以外の学生は休みだというのに何で駆り出されるのか……」
 正直言って面倒だった。振替休日があるならまだしもそんなものは存在しない。少し大きめのため息を吐いて僕はパンを食べる。
「こっちは推薦で来た子たちはもう春休みの間に顔合わせはしたけれど、今年はあと何人入ってくれるかな。知っている子いるかな」
「推薦枠があるくらい強豪校は人気だし、たくさん入ってきて羨ましいよ」
 妹が通っている私立彩(さい)嘉(か)高校は県内でもトップレベルの吹奏楽の強豪校だ。
一度だけ定期演奏会を見に行ったことがあった。演奏の技術ももちろんだが衣装や無料で配布されるパンフレットの凝りようなどお金の掛けられたそれらを見てさすが私立高校だなと感心した。

「悠真もこっちに来たらよかったのに。紫苑先輩も何回もあいつは来ないのかって言っていたよ」
「紫苑先輩には申し訳ないけれど、学費のこととかあったし。それに僕はどちらかというと演奏を聴いているほうが好きだから」
 部活動推薦で入学すると授業料は免除されるらしいが、それでも年間でかかる費用は公立の高校と比べると高い。
 2人の子供を私立に入れることは現実的に難しいことは僕も妹も知っていた。妹は高校でも吹奏楽を続けるという意思が強く、それに対して僕はそこまで続けようと思っていなかったからこのような結果になった。
 紫苑先輩は中学時代に僕たちの指導を行っていた先輩だった。
 同じクラリネットパートだった僕たち双子を何かと気にかけてくれていた。それは彼が高校生になっても僕が先輩とは違う高校に行っても変わらなかった。
 紫苑先輩には長らく会っていないが今はどうしているのだろうか。妹に聞こうとしたが、彼女は時計を見て慌てて出て行ってしまった。
僕も悠長にしていられる時間ではなかった。パンを急いで牛乳で胃袋へ流し込み制服に着替えるために自分の部屋に戻った。


   もくじへ   
「#甘甘」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -