29 | ナノ


 ステージ裏への撤収、皆が楽器の片付けのために長い廊下を歩いていく。演奏の感想、疲れたなどの愚痴が聞こえてくる中、僕は先ほどのミスのことで頭を悩ませていた。
 そんな若干落ち込んでいた僕に声をかけてきたのは高橋先輩だった。
「林君お疲れさまー! 打楽器の搬入あるから片付けしないといけないよ」
 先輩はいつも通り騒がしく、そして笑っていた。
「あの、先輩。ミスしてすみませんでした」
「もう終わったことだし気にしない気にしない! 次ミスしなければいいんだよ!」
 恐る恐る聞いてみるが返ってきた言葉は僕を励ます言葉だった。
 楽器搬出には間に合うように来てねと彼女は言い残し先に行ってしまった。

 搬出作業が終わり楽器を乗せたトラックが出発したころにはもう昼になっていた。
 吹奏楽祭は午前の部と午後の部に別れていて昼は休憩時間になっていた。そのため昼食を取る学生、自販機の前で集まっている学生などあちこちで見かけた。
 今日は晴れているし外で食べないかという部長の一声でそのまま外で食べることになった。僕は日陰になりそうな場所を選び座った。晴れているはずなのに座ったコンクリートは少し湿っているように感じた。
 昼食を食べながらわいわいがやがやと話している様子は部活動ではなく休み時間の学生に戻っているようだった。
 そんな中、早めに昼休憩を切り上げ、横を通り抜ける団体がいた。妹のいる学校だ。
 列を乱さずぞろぞろと歩いていく彼らは訓練された兵隊の行進のようだった。そんな集団の中で妹だけがあたりをきょろきょろと見ながら歩いていた。
 幸い妹はこちらに気が付いていない。早く通り過ぎてくれと祈るがその祈りは通じなかった。地面を見ておけばよかったのにその列を観察していたのはバカだった。目が合ってしまった。


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