27 | ナノ

 吹奏楽祭当日、文化ホールの裏口から楽器を搬入する作業が始まった。トラックで運ばれてきた楽器を落とさないように慎重に運ぶ。
「先輩ー、この楽器運ぶの手伝ってくださいー」
 楽器の近くでオロオロとしている江原君が声をかけてきた。彼のすぐ近くには鍵盤打楽器が置かれていた。僕は鍵盤部分を押さえないようにと指示を出しながら前の行列に続いて文化ホールに入っていく。
 文化ホールの中に入るといくつかの学校が楽器の搬入やリハーサルのための移動を行っていた。お互いぶつからないように気を付けながら楽器を運ぶには少し狭い廊下を歩く。
 すべての楽器を搬入し終えたときには、吹奏楽祭は既に始まっていた。
「出るわけでもないのにとても緊張します」
 パーカッションや楽器の搬入で積極的に動き回っていた江原君が汗を流しながら話す。
 周囲にいたメンバーは彼の発言に可愛いと言いながら笑っていた。
 そんな和やかな雰囲気のまま僕たちはリハーサル室に足を踏み入れた。

 リハーサルの時間はコンクールのときと比べると短い。せいぜいチューニングと曲を一回演奏するだけでだいたい終わってしまう。チューニングを早めに終わらせ、曲のリハーサルに入った。
 リハーサルといってもいつもと同じように演奏するだけであった。指揮をしている顧問も本番前に急な変更などを行うこともなかった。
 時間も迫ってきた中で本番もその調子で頑張りましょうと顧問が最後に一言だけ話しステージの裏へとスタッフに急かされた。
 ステージの裏では演奏が始まっていた。機材とステージから漏れ出す光だけで真っ暗であった。できるだけ音をたてないように、機材や人にぶつからないように慎重に大型の楽器やパーカッションを運んでいく。
「へー、ステージの裏側ってこんな感じだったのですね」
 一部の新入部員は周囲をぐるぐる見ながら、小さく感心しているような声を上げる。
 それを窘める声、コンクールのときとは少し違う気が抜けた空間であった。
 そろそろ曲が終わる。僕は先輩の楽器を持ち列の先頭に並んだ。クラリネットパートは僕と樋口先輩、1年生の上村さんが楽器を、高橋先輩と村瀬さん、そしてステージには立たない江原君がパーカッションを搬入する手伝いを行っている。

ステージが暗転する。いよいよ本番だ。



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