26 | ナノ
高校生にもなると時間が過ぎるのはとても早く感じる。気が付けばいよいよ明日が吹祭本番となっていた。
コンクールとは違い各校が競い合う大会ではないためか、緊張で眠れないというのは全くない。けれども、暗い部屋の外から聞こえてくるテレビの音が耳障りで目を開けた。
音がするリビングの扉から明かりが点いているのが見える。こんな夜遅くまで起きているなんて珍しいなと思いながら扉を開けた。
いつもなら朝練のために早く眠る妹がソファーに寝ころびながら普段見なさそうな恋愛ドラマをぼんやりと見ていた。
「明日本番だけど、何というか実感がないんだよね」
放送がコマーシャルに変わったころで妹がこちらを向いた。
妹の言いたいことは確かにわかる気がした。コンクールの時とは違いステージの裏の張りつめた空気もバクバクと心臓が音を立てることもないのだ。
本番前日となると僕は演奏がうまくいくか緊張でミスをしないかという不安で眠れなくなることはある。
それに比べると明日の吹奏楽祭はそれほど緊張しない。だから僕はコンクールの本番前とは違ってぐっすり眠れるはずなのに、大きすぎるテレビの音量によって眠れなくなったのだ。
「やっぱり何か物足りないんだよねえ。舞台裏でほかの学校の演奏を聴いているときの胸のざわつきや結果発表前のホールがピリピリとした感覚とか。それがあるから楽しいのに」
妹は僕とは違い明日遠足に行く子供のようなワクワクした気持ちになると昔言っていた。
「悠佳がどう思うかなんて別にいいんだけどさ、テレビの音量をどうにかして。さっきからうるさくて眠れないんだ」
はいはい、と妹は面倒そうに返事をしてリモコンに手を伸ばし音量を小さくした。
階段を上る途中リビングから小さくなったはずのテレビの音声がまだ聞こえてくる気がした。
前 もくじ 次