24 | ナノ

 中学時代、楽譜や運指が全くわからなかった僕に一から手取り足取り教えてくれたのは紫苑先輩であった。それだけではなく部活動でうまく立ち回る方法や学校生活のことなど様々なことを教えてくれた。そのおかげで中学時代は何もトラブルを起こすことなく過ごせていた気がした。
「先輩はいつから吹いているのですか?」
「中学生のときからだよ。それまでは楽器なんて音楽の授業でしかやったことなかった」
「へー、もっと長いのかと思っていましただって上手いし」
「ありがとう。でも、僕よりも上手い人ってたくさんいるよ」
 身近に妹と紫苑先輩というすごいと思えるような存在がいたから僕はクラリネットの演奏が上手いなんて思ったことはない。それに上手いすごいといった賞賛はずっと彼らにかけられる言葉であった。
 だから江原君がそんなことを言い出したのは少し驚いたのだ。
「でも先輩が野外で演奏していたとき上手いなって思ったし、なんだかとてもキラキラしていたように見えました」

「悠真先輩、お疲れ様です」
 江原君に言われた言葉に少しモヤモヤしながらも今日の部活動は無事に終わった。
 窓の外を見ると日は沈みかけており、空は赤く染まっていた。いつだっただろうか、妹が夕焼けに染まった空を火事みたいだと言っていたのを思い出す。それくらい今日の空は赤く燃えている炎のような空だった。
 そんなことを思いながら早く帰ろうとしていた矢先に尚哉君から声をかけられたのだ。
「お疲れ様。部活はどう? 慣れてきた?」
「ええ、まあ。中学のときと比べると楽ですから。休日も半日練習で終わってしまうのに驚きました」
「県大会出場とかは目指していないからね。その分気楽にできるし」
「コンクール目指していないのも意外ですね。大体の高校はコンクールに出場することに熱心だと思っていました」
「そうそう、だから僕も初めは驚いたよ。中学のときよりすごく楽だなーって」
「そういえば悠真先輩ってどうしてこの高校を選んだのですか? 聞いている感じだと吹奏楽部関係で選んだっていうわけではないですよね」
「うん、別にどこでもよかったんだよ。紫苑先輩や妹と同じ高校でなければ」


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