20 | ナノ

「先輩一緒に帰りませんか?」
 靴を履き昇降口に向かっていると声をかけられる。尚哉君だ。彼は出口付近の壁にもたれかかっている。
「問題ないけれど僕は電車ではなくて自転車で帰るから」
「知っています。夕飯を買って帰る予定なのでそこまで一緒に帰りませんか?」
 スーパーは駅とは反対方向、僕が家に帰る道側にある。
あたりを見てもほかの一年生は見当たらない。なぜかはわからないが僕を待っていてくれたのだろう。それを断るのもなんだか気が引ける。それに聞きたいことがあったのだ。

「お待たせ、それじゃあ帰ろうか」
 駐輪場に止めていた自転車のカギを開錠し校門を出た。
「どう? 高校は、まだ始まったばかりだけれど楽しめそう?」
「まあ、何とかやっていけそうです。クラスに馴染めていないとかはありませんよ」
「それならよかった。尚哉君って誤解されやすいから」
「誤解されやすいってどういう意味ですか?」
 と少し怒ったような口調で聞き返してくる。でも、僕が尚哉君のことを心配しているんだと話すとどこか嬉しそうな顔をしていた。
 中学時代の彼は他の部員から怒っているように見えて近寄りがたいと言われていたことを思い出す。
 話してみれば分かることなのに雰囲気から敬遠されてしまう彼を僕は何かと心配していたのだ。
「ああ、そうだ聞いておきたかったのだけど」
「どうしました?」
「尚哉君ってどうしてうちに来たの?」
「……一番家から近かったからですよ。それ以上でもそれ以下でもないです」
 嘘だ、直感ではあるが彼は嘘をついている、そう確信した。
「本当にそれだけが理由? 近いからっていう理由だけで尚哉君が高校を選ぶとはどうしても僕には思えないんだ」
「ここの吹部が自分に合っていると思いました」
「うーん、それも違うよね。だって中学の頃の尚哉君って先輩後輩関係なく上手い人がコンクールのメンバーに選ばれるべきだって言っていたよね。でもうちの部活はお世辞でも強いとは言えないしどちらかというとみんなで仲良く演奏しようという考えだ。尚哉君の考えは間違ってはいないと思う。どちらかというと彩嘉のほうが尚哉君の考えに当てはまると思うんだけど」
 と聞き返すと彼はため息をつき言いたくなかったのですがと話し始めた。
「嫌いな奴がいる高校と先輩がいる高校、親にどちらかに行けと言われたら俺はこっちを選びますよ」
「嫌いな奴?」
「一人いるんですよ。腹立たしさを覚える奴が。そいつと一緒に吹きたくないから」
 まさか悠佳か? そう思った尚哉君は悠佳先輩ではないですよと訂正した。
 彼と接点がある人物で尚且つ彼が苦手としているような人なんていただろうか?
 彼と交流が多かったのは木管楽器、特にサックスパートだろう。でも僕が記憶している限りではそれほど険悪な雰囲気ではなかった。だからサックスパートの先輩ではないと思う。
 ますます彼のことがわからなくなってきた。



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