15 | ナノ
「そろそろパートリーダーさんは新入部員に楽器の紹介の時間だけど。準備はできているの?」
樋口先輩の言葉にハッとした先輩は慌てて第一音楽室まで走っていく。こちらまで聞こえる教室の扉を開ける音に樋口先輩と二人でため息をついた。
「あかりも行ったし続きしないと」
先輩を見るとすでにクラリネットを組み立て終えていた。
以前はもっとたくさんの部員がいたようで、その名残からか部員数はそれほどいないのに楽器の数はやけに多い。
入部したての頃、妹のように楽器を買うことになるのだろうかと心配していたのだがそんなことはなく安堵したのを覚えている。
「ところで先輩、楽器体験ってどこでしたっけ?」
「クラは3階教室前の廊下。そうだ、椅子も準備しないと。申し訳ないけれど私のともう1つの新入生用のやつ持ってきて」
先輩は新入生用のクラリネットを2つ持って先に行ってしまった。それに続いてほかのパートの部員たちも割り当てられた場所へと向かう。先輩を追いかけるように僕も音楽室を出た。
教室前の廊下は高校のホームページ曰く多目的空間という名称があるらしいのだが、その名称が使っている人を見たことがない。少し広めの空間で雨の日には運動部が使っている。僕がその場所についたとき先輩は椅子を運んでいる最中だった。
「持ってきましたよ」
僕がそう声をかけると先輩はそこに置いといてと返事をした。
「そうだもう一つ頼んでもいい? 運指表持ってきてくれない? 私のファイルの中にあるからそれごと持ってきて」
そろそろ来ると思うからと言い僕から視線を逸らした。
樋口先輩のファイルを片手に多目的空間に戻ろうとしていると音楽室から出てきた高橋先輩とばったり会った。
「いろいろ面倒かけてごめん、そっちは順調?」
「新入部員への説明は終わったのですね」
「今から楽器体験。参加者は18人だったから3人ずつの分けようっていう話になって、一番初めはこの子たち」
先輩の背後には3人の女子生徒がいた。そのうちの一人は江原君からクラリネットのことで根掘り葉掘り聞かれていた生徒だった。
先頭に高橋先輩、中央に新入生、最後尾に僕という順番で多目的ホールへと到着した。
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