14 | ナノ
「ねえ、そこの君! バリトンサックスってどんな楽器? 何も知らないからさ、よかったら教えてよ!」
話を振られた本人は面倒くさそうにしているのがよくわかる。
「どうせ後で楽器の説明があるはずなのに。そうでしょう悠真先輩」
僕がうなずくと同時に悠真先輩? と彼は首を傾げ僕を見た。
「2年の林悠真です。クラリネット吹いています」
クラリネット! と彼は目を輝かせる。聞いてみるとどうやらクラリネットを吹きたくて入部しようと思ったらしい。クラリネット希望している男子生徒がいるのはとても嬉しいものだ。
彼にクラリネットパートのことでも説明しようかと思ったが、近くの階段から樋口先輩たちが上がってきた。
「ここにいるのは仮入部に来た新入生たち?」
彼女の問いに僕はそうだと答える。
「わかった。それじゃあ新入生たちは第一音楽室……授業で使う方の音楽室を開けるのでそこで待っていてください。それじゃあ林君楽器体験で使うクラリネット組み立てるのを手伝ってくれる?」
「了解です。そういうわけだからまた後で」
江原君、尚哉君を含めた新入生は第一音楽室に移動し始める。音楽室に入るとき、尚哉君が少しだけこちらに顔を向けた。そういえばさっきの会話で彼は何を言おうとしていたのかと少し気になった。
「そういえば先輩、クラリネットの志望の生徒とクラリネットの経験者がいましたよ」
「本当? でも経験者は確定として初心者はまず音が出せないと……」
彼女の言葉に江原君のことが頭に浮かぶ。
クラリネットを志望していると言ってくれた江原君にはぜひクラリネットパートになってほしいのだが、どうなるだろうか。
もう一人の先輩である高橋先輩が来たのはそれから5分も経たない頃だ。
慌ただしく音楽室の扉を乱暴に開けて入ってきた。比較的扉近くにいる僕は驚いて体を譜面台にぶつけてしまいガシャンと床に譜面台がぶつかる音が響いた。
「ごめん! 遅れてしまった!」
「あかりちゃん、静かに入ってきてよ。それで遅れたのはまた先生に捕まっていたの?」
「そうだよ。どうして今年も同じ担任なの! 今年も赤点ギリギリだったらお説教だ……」
「そう、頑張ってね」
そんな奏は助けてくれないのと高橋先輩は樋口先輩泣きつくが軽くあしらわれていた。
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