人魚3 | ナノ

 次に僕が人魚を見に行ったのはあの人魚を見た日から大体半年後のことだ。
 あの日から何度も何度も夢で水槽で人魚が泳いでいるのを見た。金色の髪に青い目の叔父の家にいる人魚にそっくりな人魚と深く暗い海の中を泳ぐといった内容だった。その夢が忘れられず、あの人魚が今どうしているのか気になって仕方がない。
 とうとう我慢の限界がきて何も言わずに叔父の家を訪れたのだった。
 叔父の家の玄関は大体いつも開いている。田舎だから空き巣に入られることなんてめったにないと以前叔父が言っていた。
呼び鈴を鳴らし叔父さんと呼んでみるが何も反応がない。どこかへ出かけてしまったのだろうか。叔父のスマホに連絡を入れていたのだが、まだ返事はない。
待っていても埒が明かないからと自分に言い聞かせ、僕はあの水槽がたくさんある部屋の扉を開けた。

 以前見に来たときには汚れが一つもない水槽の中を泳いでいた。しかし、その面影はなく魚たちは水面にぷかぷかと浮き、水槽には緑色の藻のような何かが繁殖し辺りとても生臭かった。叔父はどういうわけかこの魚たちの世話をすることを辞めてしまったようだ。
 ここの魚はあの人魚に食べさせるものだったはず。もしそうならあの人魚は腹を空かせているのかもしれない。
 一番大きな水槽に目をやると彼が水面に向かって泳いでいるのが見えた。よかった生きていた安堵し近づく。
 彼の髪は傷み半年前と比べるとどこか不健康そうだった。
 こちらを見る目もどこか虚ろで、焦点が合っていないように見えた。
 僕はこの人魚が死んでしまうのではないかと怖くなった。僕は近くにあったハサミで指を切り水槽の中に入れた。


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