6 | ナノ
新入生全員が全員入場し終えプログラムの通りに式は進んでいった。そして生徒一人一人の名前が読み上げられる。
「神林尚哉」
担任と思われる教師が後輩の名前が呼んだ。彼はなぜこの高校に来たのだろうか。そう考えている間にも次々と新入生の名前が呼ばれていく。
点呼や生徒会長や校長の話などがようやく終わり、新入生退場という教員の掛け声で新入生は立ち上がった。
退場の曲もかつてコンクールの課題曲になっていた曲だ。多分この曲が選ばれたのは曲名に春という言葉が入っているからだと推測する。華やかで新たな門出を祝う入学式にはぴったりな曲だなと思う。
目の前を通り退場していく生徒達の中で神林君を見つけた。背が高く茶色い髪を持つ彼はよく目立つ。入場のときとは違い彼はこちらを見ることはなくどんどん遠ざかり体育館からいなくなってしまった。
生徒が退場すると来賓の人や保護者が続々と体育館から出ていき残ったのは生徒会と吹奏楽部の部員くらいだ。
「それじゃあ楽器の搬出始めるよー」
間延びした部長の声が聞こえ搬出が始まった。
周囲を見るとチューバなどの大きな楽器から運び始めているようだ。クラリネットを椅子の上に乗せ、僕は一番運ぶのに苦労しそうなティンパニを運ぶことにした。
「ティンパニ運びたいので誰か手伝ってくれませんか?」
一番大きいティンパニを運ぶには4人は必要だった。集まってきたのは高橋先輩やホルンパートの先輩あとはサックスを担当している同級生だった。
平坦な道はキャスターを利用して移動させ、音楽室のある3階までは4人で声を掛け合いながら一段一段ゆっくりと登って行った。
楽器の搬出を終え音楽室で片づけをしていると高橋先輩が近づいてきた。
「お疲れ様です。この後は式の片づけですよね」
「そうだよー、どんなに早くても解散はお昼過ぎになりそうだねー」
お昼という単語を聞いてグウと腹が鳴ってしまった。高橋先輩はくすくすと笑っていた。どうせ家に帰っても昼ごはんは自分で作らないといけない。だったら帰りにどこかで食べて帰ろう。それにこのままだと家に着くまでに空腹で倒れる気がした。
「そういえばこっちを見てくる子が何人かいたよね。茶髪の男子生徒とかは髪色もあって目立っていたねえ」
「いましたね、でも彼は睨んでいたように見えませんでした?」
高橋先輩は見ていると表現していたが彼は睨みつけていたと表現するほうが正しいと思う。
「そうかなー。まあどっちにしてもうちが気になる感じだよね、入部してくれたらいいな」
「そうですね、彼が吹奏楽部に興味があるならきっと入部してくれるでしょう」
そんな会話をして体育館へ向かった。
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