4 | ナノ

 会話をしていると樋口先輩が戻ってきた。
「あ、奏おかえりー。混んでいた?」
「吹部と生徒会しかいないし混んでいない。行くなら早く行ってきたら」
 高橋先輩はじゃあそうすると言って立ち上がり体育館から出て行ってしまった。
「ねえ、あかりちゃんと何を話していたの?」
 樋口先輩は僕に対して尋問するような口調で話しかけてきた。そんな口調で言われたら先輩に対して僕は何か失礼なことをしてしまったのだろうかと心配になる。
「今日は入学式だったので、何人入部してくれるかなと話していました。先輩はクラリネットパートに何人くらいほしいと考えていますか?」
「3人。卒業したら人足りなくなるし、それに3人だったらそれぞれ個別で指導ができる」
 新体制になってからクラリネットパートは高橋先輩、樋口先輩、そして僕の三人だけだ。ほかの学校と比べると少ない。
「全員が初心者でもあかりちゃんは教えるのが上手いし、林君は中学からやってきたから何とかなるとは思う。なるべくこちらに人員を割いてほしい」
 どのパートも人数が少なく新入部員は争奪戦になるだろうなと遠くを眺めながら僕は考える。
「林君はどんな人が来てほしいの」
 普段あまり話しかけてこない先輩が僕に聞いてきたことに驚きつつも先輩に対する答えを考える。どんな人と言われてもそんなにぱっとでてくるものではない。
「長く続けてくれる男子部員が何人か入ってきてほしいなと思います」
「たまに居心地悪そうにしているよね」
 男子部員は僕とチューバの先輩しかいない。本当は同級生にもう一人男子部員がいたのだが、いつの間にか退部していた。
 吹奏楽部に所属していると話すと女子部員と仲良くしたいから入部したのかとからかってくる人がいた。中学時代から言われ続けていることであって慣れてはいるものの、まだ一部の人にとっては吹奏楽=女子の部活だというイメージがあるようだ。
 そんなイメージがあるからか入部してくる男子部員は少ないのだと思う。2人、いや1人でもいいからとにかく男子部員が入ってほしい。
 この後戻ってきた高橋先輩も混ざって話に花を咲かせていると「そろそろ、準備を」と顧問から指示があった。
 リガチャー(クラリネットの吹く部分に付いている金属の留め具)のねじを緩めリードを取り外す。アイスの棒を加えるようにしてリードを湿らせ再びリガチャーを付けた。クラリネットはリードを振動させることで音を出しているのだ。リードの取り扱いに一番気を遣う。
 じぶんを落ち着かせるようにふーっと息を吐く。人前で演奏するのは何回やっても慣れないものだ。指揮台に立った顧問が指揮棒を振り上げた。


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