蒼闇せまる

7歳の頃からエクソシズムを習ってただと?
小学生の頃には今の俺と同じ授業を受けてたってのかよ、雪男のヤツ。
昨日の入学生代表のことといい。俺の弟は頭が良い。
雪男の説明でいくと、2年前に祓魔師になったってことは・・・
俺たち15歳だろ。二年前ってことは13歳のときにエクソシストになったのか。
んで習い始めたのが、7歳。・・・って6年も掛かったのか、雪男で。
・・・はあ、俺、何時になったらエクソシストになれるんだ?
なんだか、絶望感が漂いだしたぞ、おい。
俺は課題をやりかけた机の上に突っ伏した。


っつうか、おい。小学校に入った頃には、あいつ、ここに通ってたのか?
俺は改めて弟が分からなくなった。


そうなんだよ。
今、思い出してみれば、小学校に上がる前の雪男は何時だって俺の隣りにいた。
ちょっと気の弱いところがあって、ちょっと身体が弱くって、でも結構強情な奴だった。
いつも喧嘩ばかりしている俺の怪我を治療するのが得意で、・・・いつも俺の傍からはなれなかっ・・・た?
そうか、思い出したぞ。
小学校に入って、初めてクラスが分かれたんだった。
教室が違うと、結構逢わないもんだなーなんて思ってたけど。
学校からまっすぐ帰ってくる俺と、会うわけがなかったんだ。
あの頃、突然、雪男が俺の後をくっついて来なくなった事が、結構ショックだったんだよな。
ジジイがいないときは、必ず雪男もいなかった。
あの頃から俺はずっと一人だった。
力の加減が出来ない俺は、始終何かを壊していたし、同級生を怪我させてた。
そんなだから友達もできるわけがないし、教師も俺のことを遠巻きにする。
そのうち、学校に行くことが面倒くさくなっていった。
行ったって仕方ない。そう、思えてきたんだ。
勉強も遅れる一方だったし、・・・今でも頭悪いけどな。
そういえば、小学校の高学年の頃、一人だけ俺のことを怖がらない奴がいたな。
そいつも、学校で会うより、外で会うほうが多かった。
主に神社。俺がよく昼寝をしていた神社にそいつもいた。
・・・?名前、なんていったっけ?・・・思い出せない・・な。
なんか、顔も思い出せないな。どんなヤツだっけか。
何時も夕方頃に現れて、夜遅くまで一緒にいたんだよな。
いつの間にか逢わなくなった。確か、なんか切欠があったような・・・。
ああ、そうだ。雪男のやつが俺を探しに来て・・。
それから・・どうしたっけ?
思い出せねぇ。なんだ、これ。そこだけ、切り取ったように思い出せない。
記憶が繋がらない?


あいつは俺と同い年で、俺とよく似ていた。
人懐こくて大胆でちょっと嫌なヤツだった。
あいつは雪男が近付いてきたとき今までにない低い声で呻くように言った。
「エクソシストめ、若君を縛り付ける楔が」
あいつが何を言っているのか俺には分からなかった。
だが、俺の弟に向ける憎悪の感情だけは感じ取れた。
俺はあの時、何かした・・・?
後ろから雪男の声がして、俺は今にも弟に飛び掛りそうな目の前のあいつに。
・・・何をした?
「兄さん、誰かいるの?」
頭の中で何か蒼い光が弾けた気がした。
あいつが闇に霧散するのと、雪男が俺の手を握るのとはほぼ同時だった。
・・・俺は何を・・・した?
「いや、誰もいないだろ?ここ」
雪男は酷く怯えたように俺を見ていた。
あの時、雪男にも見えていたのだろうか。あいつが引き裂かれ、霧散するのを。
生まれたときに俺から魔障を受けたと言っていた。だとすれば、見えていたはずだ。
俺はあの時、あいつだけしか見た覚えがない。
あいつは一体、何者だったんだろうか。青い闇の紛れる悪魔。
雪男に連れられて修道院に帰ると、今までにないくらい厳しい顔をした神父(ジジィ)が待っていた。
そしてしばらく、俺は修道院から出ることを禁じられた。
珍しく熱を出して寝込んだから、外に出たくても出れなかったんだけど。
ぼんやりと思い出した記憶は俺を不愉快にした。



俺は強く思った。
「俺の弟に触れるな」
その意志に呼応するように悪魔は霧散したように思う。
あの時、既に俺は・・・悪魔としての力に目覚めていた?
今、考えても仕方ねぇか。過ぎたことは過ぎたこと。
って、まだ、課題終わんねぇ。
壁の時計を確認すれば、そろそろ、雪男の帰ってくる時間。
・・・やばい。絶対に説教される。・・・やばい。
俺は積まれた課題をやっつけることに集中した。
・・・小一時間後、雪男が帰宅しても終わらなかったことは言うまでもない。

2011/05/15

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